イノベーションの意味とは?課題や情報共有ツールの効果について
プロジェクトにおける新しいアイデアやイノベーションは、人と人によるナレッジの活用やコミュニケーションによっても生まれます。
しかし、組織づくりにおいて部門や世代の垣根を越えた情報共有方法に課題を抱えているところは珍しくありません。そのため、情報共有ツールの需要は年々高まっていると考えられます。
この記事では、イノベーションの意味や必要性、情報共有ツールがどのような効果を得られるものなのか、そして情報共有ツールを使うことによってイノベーションが生まれやすくなる理由について解説していきます。
新しいアイデアが生まれやすい環境づくりを目指している方はもちろん、すでに情報共有ツールの導入を検討している方も含め、企業担当者としてイノベーション促進を改めて考えてみましょう。
目次
イノベーションとは
ビジネスシーンにおけるイノベーションの意味やイノベーションが求められるようになった背景、イノベーションにおける課題を解説します。
イノベーションの意味
イノベーション(Innovation)とは、物事に対する「新しい捉え方」「新しい価値の創造」「新たな変化をもたらす」といった意味合いで使用される外来語です。日本語では「技術革新」と訳される場合がありますが、技術に限らず新しい物事を開発・開拓する際の表現方法として使われています。
イノベーションの必要性
イノベーションという言葉は、革新を行い社会に価値を創造し企業をより成長させる意味合いで使われ、多くの企業でイノベーションが求められていました。しかし、技術発展の加速、感染症・地政学リスクの拡大、価値観の多様化などが進む現代においては、企業の発展のみならず、厳しい経済状況下で組織を存続させるための生存戦略の一環として必要と考えられています。
発展させるためのイノベーションから生き残るためのイノベーションへと、時代とともに変化していくイノベーションを促進させるには、より具体的な施策が必要となっていきています。
日本におけるイノベーションの課題
内閣府は、日本はこれまで世界有数の科学技術力と国民の教育水準の高さによって高度経済成長を実現してきました。一方、長引くデフレや円高によって経済状況が弱化しており、日本を世界で最もイノベーションに適した国にしていくことが今最も必要なことだとしています。そのうえで、「イノベーション力の強化」「研究力の強化」「教育・人材の育成」を科学技術・イノベーション政策の3本柱として推進しています。
参考:内閣府「科学技術・イノベーション」
一方、イノベーションにおける課題も複数浮き上がっています。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「オープンイノベーション白書」では、経営における高品質プロダクトへのこだわりや既存の取り組み改善・改良に注力する傾向、人材面における流動性と多様性の不足や人材育成・活用の体制不足、スタートアップにおける起業意識の低さやグローバル展開の少なさなどが、日本における現状の課題として挙げられています。
参考:NEDO「オープンイノベーション白書 第三版」
しかし、日本が持つプロダクトの品質の高さや人材の定着率、スタートアップの成長の余地などは、今後のイノベーション創出の武器にもなります。日本の特性を活かしたイノベーション創出の取り組みが重要です。
イノベーションの分類
イノベーションの定義は、研究者、学者、起業家によってさまざまなものがあります。現在の主なイノベーション論を解説します。
ヨーゼフ・シュンペーター
ヨーゼフ・シュンペーターはオーストリアの経済学者です。1912年に発表した著書のなかで、下記の5つをイノベーションとして分類しています。
プロダクト・イノベーション | 従来とは異なる価値を持つ革新的なプロダクトを開発すること |
---|---|
プロセス・イノベーション | プロダクトの生産や流通などのプロセスを大きく改善すること |
マーケット・イノベーション | 新規市場の開拓や新規顧客の獲得を行うこと |
サプライチェーン・イノベーション | 新しい原材料の供給ルートを開拓・確保しサプライチェーンを大きく改善すること |
オーガニゼーション・イノベーション | 組織変革によって企業や組織の体制を大きく改善すること |
ピーター・ドラッカー
マネジメント論で有名なオーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーは、イノベーションが生まれるきっかけとして以下7つの要素を挙げています。
予期せぬ成功・失敗、予期せぬ出来事 | 予期せぬ出来事の分析により新しい発見が得られる |
---|---|
ギャップの存在 | 現実とのギャップとその原因分析によりギャップの解消方法を見出せる |
ニーズの存在 | ニーズがあるもの、ニーズに対応できていないものを洗い出すことが新しい価値創出に繋がる |
産業構造の変化 | 産業構造の変化を追えば、産業構造における特徴の把握や変化の予測ができる |
人口構造の変化 | 組織変革によって企業や組織の体制を大きく改善すること |
意識の変化 | 社会の意識や価値観の変化に気づけば、意識の変化に対応した新しい価値創出ができる |
新たな知識の出現 | 新しく生まれた技術や知識を活用することで新しいアプローチが可能になる |
クレイトン・クリステンセン
アメリカの実業家・経営学者であるクレイトン・クリステンセンは、イノベーション研究の第一人者といわれています。著書「イノベーションのジレンマ」のなかでは、イノベーションにおいて2つの手法を定義しています。
持続的イノベーション | 既存プロダクトの改善を続けることによって成されるイノベーション |
---|---|
破壊的イノベーション | 既存プロダクトに囚われず、まったく新しい発想でプロダクトを生み出すことで成されるイノベーション |
ヘンリー・チェスブロウ
アメリカの経営学者であるヘンリー・チェスブロウは、著書「オープンイノベーション」では、イノベーションの2つのパターンを定義しています。
オープンイノベーション | 外部リソースや他業界・業種が持つ技術やノウハウを活用してイノベーションを生み出すこと |
---|---|
クローズドイノベーション | イノベーションを自社内のみで生み出すこと、自前主義でのイノベーション |
情報通信技術が発展した1990年代以降は、イノベーションをより加速させる方法としてオープンイノベーションが推進されるようになりました。オープンイノベーションについては以下の記事で詳しく解説しています。
イノベーションに重要な「両利き経営」とは
両利き経営とは、世界的に著名な経営学者であるアメリカのチャールズ・A・オライリーとマイケル・タッシュマンが提唱した経営論です。企業活動において確実に利益を得られる既存事業の改善(知の深化)だけでなく、新しい変化や事業開拓の模索(知の探索)の両者をバランス良く行うことが重要だとしています。
「知の深化」と「知の探索」を組み合わせることでイノベーションは促進され、企業経営はより強固なものとなります。イノベーションを促進したいのであれば、知の深化・知の探索それぞれのアプローチを理解し、両利き経営を実現することが重要です。
「両利き経営」について詳しくは下記をご覧ください。
両利き経営を実践するためのフレームワーク「イノベーションストリーム」
イノベーションストリームとは、イノベーションを実現するための実践的なフレームワークです。「市場」と「組織能力」の2つを軸にしたマトリクスの下、下記の3つの方向性でイノベーションを推進します。両利き経営を実現するためには、イノベーションストリームを用いてそれぞれの施策がどの領域にあるかを確認しながら取り組むことが大切です。
- 漸進的イノベーション:既存の組織能力で新規市場に参入する
- アーキテクチュアル・イノベーション:新しい組織能力で既存市場に参入する
- 不連続型イノベーション:新しい組織能力で新規市場に参入する
その他、イノベーションを促進させるために必要なこととは
イノベーションが起こりやすい企業の特徴として、両利き経営の実現以外に以下の要素が挙げられます。
- 市場やニーズの変化に敏感で、柔軟に変化できる環境が整っていること
- リスクマネジメントに対して高い意識を持っていること
- 情報共有やコミュニケーション基盤が整備されていること
これらの要素に不足があると感じている場合には改善が必要です。市場やニーズの把握にはマーケティングツール導入、リスクマネジメントには情報の見える化、情報共有やコミュニケーション基盤には情報共有ツールの導入といった施策が有効でしょう。
イノベーションに欠かせない情報共有ツールの効果とは
情報共有ツールは、従来のコミュニケーション手段であるメールの送受信やドキュメントの共有といった機能を一括して行うことができるツールです。
一般的な連絡ツールのように権威性を持った人物の決定事項を上から下へと流すのではなく、情報共有ツールでは個々人が意見を発信、精査することによって、情報がより価値の高いものとなっていきます。例えるならインターネット掲示板のような役割を、企業内ないし企業外との連携で作り上げていくというイメージです。
現代ではインターネットの普及で個人の持っているナレッジが繋がりやすい状況にあります。そんなナレッジを組織全体で共有・活用したいときに役立つのが情報共有ツールです。役職や年代、企業や部門に限らず気軽に発言できる場を設けることによって、イノベーション促進の効果が期待できます。
NTTデータやNECなどの大手企業では、すでに社内ネットワーク強化に向けた情報共有ツールの導入が行われており、ロールモデルの確立やアイデア共有に活かされています。
情報共有ツールでイノベーションが生まれやすい理由
情報共有ツールを使うことでナレッジの共有・活用によってイノベーションが生まれやすいという話をしました。
ここからは「なぜ情報共有ツールを導入すればイノベーションが生まれやすくなるのか」にフォーカスを合わせながら、もう少し詳しく掘り下げていきます。
情報共有ツール導入におけるイノベーション促進の代表的な例を挙げると、「組織のオープン化」「社員同士のコミュニケーション促進」「ナレッジの共有による新しいアイデア」の3つが考えられます。順を追って見ていきましょう。
組織のオープン化
近年ではイノベーションの一環として、情報共有ツールを社内のみならず異業種・異分野などの社外へと幅を広げることによって多角的な視点を持つ「オープンイノベーション」が注目されています。
その理由は自社組織がオープン化することによって、自社だけに留まらず市場全体の拡大や新規顧客の獲得を目的として、業種・分野の垣根を越えたイノベーションが生まれやすいからです。
情報共有ツールの参加者を増やすことは、知識や思考の数が増えることでもあり、イノベーションの促進に大きく近づくことができます。
オープンイノベーションでは、自社内という限定的なコミュニティーでは発見に至らなかった新しいアイデアや斬新な発想が見つかる可能性も十分にあります。しかしその一方で、競合他社への情報漏洩や批判といったリスクを抱えている面もあり、どのように対策をしていくかが重要です。
匿名やニックネームを廃止して実名にすることで発言への責任を持たせたり、情報漏洩の心配があるものは限定的なグループ内でのみ共有したりなど、いかにリスクと上手く共存していくかがオープン化の課題となります。
社員同士のコミュニケーション促進
イノベーションの促進には、社員同士のコミュニケーションが必要不可欠といっても過言ではありません。
しかし、大手企業になればなるほど世代や部門といった見えない壁がハードルとして立ちはだかり、思い通りにコミュニケーションを取れないことが多いです。
とくに普段の業務で交流することのないような部門同士では、情報共有をしても「専門性が高いため理解することが難しい」「社員同士の信頼関係が築けておらずフィードバックを貰いづらい」といった問題に直面します。
そんな問題を解決するためには日頃からコミュニケーションを取り、情報共有におけるハードルを下げることが大切です。
ナレッジの共有・活用による新しいアイデア
情報共有ツールを活用することによって組織がオープン化し、社員同士でもコミュニケーションが活発に行われるようになると発生するのが新しいアイデア、すなわちイノベーションです。
いままで築き上げてきた情報をドキュメントで固定しておけば、のちに加入したメンバーはさかのぼる必要もなく瞬時に確認できるほか、ナレッジを上書きしてより価値の高いものへと変えることができます。
また、付加価値を与えながら作り上げた秘伝のタレのようなナレッジは、企業の発展・生存戦略に多大なる影響を与えます。
個人が持っているナレッジを共有し、イノベーションを促進させることは、いわば企業全体の資産を底上げすることに繋がるのです。
情報・ナレッジ共有ツールならQast
情報共有ツールは部門や世代を超えて万人が使えるものであることが大切です。
Qastは複雑な機能を排除し、シンプルさをとことん追求したナレッジ共有ツールです。メモとして自分の持っているナレッジを共有するだけでなく、フォーマットに沿って入力するだけのQ&A形式でメンバーへ質問を投げかけることが可能です。
質問は回答済みのものを含め知恵袋のように溜まっていくため、ストック型のコンテンツとしてあとから参入したメンバーでも閲覧できる設計となっています。
シンプルゆえにユーザビリティが高く、2,000以上の企業が導入した実績もあるため「はじめて情報共有ツールを使ってみたい」「簡単に情報共有できる場が欲しい」という企業に適しています。
質問数や回答数をもとにランキングが作成され、利用モチベーションのアップにも繋がります。ナレッジ共有への意欲や実績を目に見える数字でアピールできるため、社員にとっても大きなメリットです。
まとめ
企業のイノベーションを促進させるためには、「知の深化」と「知の探索」への理解や、柔軟に対応できる環境を整えること、リスクマネジメントに対する意識を持つことに加え、社員同士が気軽にコミュニケーションを取れる場を設けることが大切です。
情報共有ツールを使えば、オンライン上でナレッジ共有・活用の場を用意でき、イノベーションが起きやすい組織づくりを実現することができます。情報共有ツールは企業内で定着するまでが大変ですが、運営による定着サポートを受けたり、実際の事例を見せてもらったりすると良いでしょう。
Qastは無料で利用できるフリープランを設けているため、まずはお試しで企業に導入してみてはいかがでしょうか。