製造業の現状と課題とは?事業環境の変化と動向を詳しく解説

日本の製造業は、人材の不足やサプライチェーンの分断、国際情勢の緊迫による原油価格の高騰など、さまざまな課題を抱えています。さらには、2020年に発生した新型コロナウィルスによっても経済的な影響を受けました。
では、今後の日本の製造業はどのように変化していくのでしょうか?

この記事では、製造業の現状や社会情勢の変化、デジタル化するメリットなどについて解説します。

製造業の現状

日本の製造業における実質GDP成長率は、2020年に発生した新型コロナウイルスによる経済的被害のよって、2008年のリーマン・ショック時を上回ると言われるほど大きく落ち込み、経済に大打撃を与えました。
その後、2020年下半期から2021年にかけては大企業製造業を中心に回復傾向にあったものの、2022年に入り、大企業製造業・中小製造業ともに減少に転じています。

一方で、製造事業者の営業利益は、新型コロナウイルス感染症などの影響で減少傾向にありましたが、2021年度は半数近くの企業で回復に転じました。今後3年間の営業利益も約半数の企業で増加する見込みとなっています。

製造業の営業利益の動向

※経済産業省:2022年版ものづくり白書 「製造業の営業利益の動向」を加工して作成

出典: 経済産業省「2022年版ものづくり白書」

このような状況を踏まえ、製造業が生き残りをかけて対応が急務とされるサプライチェーンの強化に対して、デジタル化が必要とされています。

今後、重要視されるデジタル化への対応状況について、設備投資やIT投資の相関から、産業の競争力にどのような影響を及ぼしているかについてご紹介します。

製造業のニューノーマルへの対応の必然化

製造業を取り巻く事業環境においては、新型コロナウイルス感染症だけではなく、自然災害、国際情勢の緊迫による原油価格の高騰、半導体不足の影響など、サプライチェーン寸断のリスクとなる「不確実性」が浮き彫りとなりました。

さらには、世界各国でカーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーションへの取組が急速に進展。
製造業のニューノーマル時代への対応が急務となっていますが、これらニューノーマルへの対応が「課題」に対応するものではなく、「成長」へと繋がるような道筋を見出す必要があります。

社会情勢の変化のうち、事業に影響があるもの

経済産業省の「2022年版ものづくり白書」で、社会情勢の変化のうち事業に影響があるものを調査したところ、2020年度では「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」が約8割と突出していましたが、2021年度の調査結果では、「原材料価格の高騰」「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」「人手不足」「半導体不足」の4項目の回答が約半数に達していました。

社会情勢の変化のうち、事業に影響があるもの

※経済産業省:2022年版ものづくり白書「社会情勢の変化のうち、事業に影響があるもの」を加工して作成

出典: 経済産業省「2022年版ものづくり白書」

さらに社会情勢の変化のうち、事業に影響があるものを企業規模別に比較すると、中小企業、大企業ともに 「原材料価格の高騰」「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」の割合が高くなっています。また、大企業では「半導体不足」「脱炭素・脱プラスチック等の環境規制」の割合も高くなっていることがわかります。

社会情勢の変化のうち、事業に影響があるもの(企業規模別)

※経済産業省:2022年版ものづくり白書「社会情勢の変化のうち、事業に影響があるもの(企業規模別)」を加工して作成

出典: 経済産業省「2022年版ものづくり白書」

製造業における営業利益と設備投資との関係

企業の設備投資は、新型コロナウイルス感染症の影響で営業利益が落ち込んだ2020年前半では、設備への投資を控える企業が増加しましたが、その後は回復傾向を辿っています。

財務情報を用いて日本企業の営業利益率と企業行動の関係を分析すると、2017年度から2020年度の平均値で、営業利益率が高い企業では積極的に有形・無形の設備投資や研究開発投資を行っており、低い企業では、設備投資は少ないが借入金増加率が高いことがわかりました。

これは日本と米国、EUの製造業企業を比較した際に営業利益率は米国、EUの方が高く、無形固定資産や研究開発への投資についても米国、EUの方がより積極的であることが関係しています。設備投資、特に無形固定資産や研究開発への積極的な投資が、今後の日本の製造業の発展において重要となるといえます。

営業利益率

※経済産業省:2022年版ものづくり白書 「1.我が国製造業の足下の状況 ④稼ぐ力」を加工して作成

出典: 経済産業省「2022年版ものづくり白書」

なお製造業におけるIT投資の水準は横ばいとなっていますが、IT投資で解決したい課題が「働き方改革」「社内コミュニケーション強化」から、「ビジネスモデルの変革」に移行するなど、経営者の意識に変化が生じていることも注目すべき点です。

今後は、既存事業への課題解決から、新規事業の創出やビジネスモデルをチェンジしていくための投資として、IT投資を積極的に行う企業が増えてくることが推測されます。

IT投資推移

※経済産業省:2022年版ものづくり白書 「2.製造業を取り巻く事業環境の変化 ③デジタル(第7章関連)」を加工して作成

出典: 経済産業省「2022年版ものづくり白書」

製造業をデジタル化するメリット

製造業でデジタル化を進めるメリットは大きく分けて3つあります。

開発・製造にかかる時間・コストの削減

製造業をデジタル化すれば、商品開発にかかる知見を蓄積することができるため、時間や製品化する時間を短縮させることや、顧客ニーズへの迅速な対応が実現できます。

人材不足、ベテランからの技術継承の解消

少子高齢化による人材不足は、製造業にとって大きな課題となっています。高度な技術をもった技術者が高齢化したことで、これまで日本のものづくりを支えた技術の継承が難しくなっていることや、受け手となる働き手も少子化の影響により不足しています。
経済産業省の調査では、94%を超える企業で人手不足を認識しており、32%の企業ではビジネスに影響が出ていると回答しています。

製造業のデジタル化を進めることで、ベテランからの技術を起業財産として蓄積し、企業の事業を継続し生産性を向上することができます。

働き方改革への対応

新型コロナウイルス感染症の流行により、これまでの働き方にも影響がありました。出社できない状況下において、事業を継続させるためにも、リモートワークやテレワークといった手段をとり、会社以外の場所でも同じ環境で生産性を保てるかが企業としても喫緊の課題として対応を迫られたと思います。デジタル化を推進すれば、これら働き方への対応も実現が可能となります。

ナレッジマネジメントシステム「Qast」とは

これら製造業のデジタル化を実現するために、「Qast」のようなナレッジ経営クラウドを利用する方法が適しています。

ベテランがもつ知識をシステムに蓄積することで、技術継承をスムーズに進めることができます。

ベテランがもつ暗黙知を言語化し、形式知としてQastで共有することで、誰でもいつでも同じ情報にアクセスすることができ、業務の生産性向上に貢献します。

ナレッジは会社の財産です。ナレッジを属人化させずに適切に管理を行うことは、今後の事業発展に重要なことといえるでしょう。

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