製造業におけるESG経営とカーボンニュートラルへの対応

現在、製造業においてもESG経営への取組が広がっていますが、このESG経営は世界的なトレンドであり企業の成長に大きく関わるものです。

この記事では、なぜESG経営がもとめられているのか、また対応を迫られているのかを詳しく説明します。

ESG経営とは

ESG経営とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの要素を配慮した企業経営のスタイルを指します。

<ESG用語説明>
  • Environment(環境):環境問題の解決に取り組んでいるか
  • Social(社会):社会的課題の解決に取り組んでいるか
  • Governance(企業統治):公正・透明な企業経営ができているか

従来、金融機関や投資家などが投資や融資を行う際には、その企業の収益性や回収可能性といった財務状況を重視しながら判断を行っていましたが、近年、財務状況だけでなく、ESGへの取り組みも重視して判断する「ESG投資」の動きが広がっています。

この「ESG投資」は、「責任投資原則(PRI)」の発足が注目を集めるきっかけになりました。

責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)とは、2006年にコフィ-アナン第七代国連事務総長の提唱により、国連環境計画と金融イニシアティブ、及び国連グローバル・コンパクトとのパートナーシップが打ち出した投資に対する原則のことです。

その内容は、投資家に対して企業の分析や評価を行う上で長期的な視点を持ち、ESG情報を考慮した投資行動をとることを求めるものでした。

2020年11月時点でPRIの署名機関数は3470機関、その署名機関の運用資産総額は約100兆ドル(おおよそ1京円)にも上ります。

ESG投資とSDGs経営の関係とは

SDGs経営は、「ESG投資」が2015年に国連で採択された「SDGs」と深く関係することから、さらに注目を集めるようになりました。SDGsは持続可能な開発のための17の国際目標が掲げられていますが、これら目標とESGの考え方は近似しており、「ESG」と「SDGs経営」を2セットで考える企業も多くあります。

経営の中のカーボンニュートラル、ESGやSDGsとの関係

※関東経済産業局:カーボンニュートラルと地域企業の対応「(参考)経営の中のカーボンニュートラル、ESGやSDGsとの関係」を加工して作成

出典: 関東経済産業局「カーボンニュートラルと地域企業の対応」

製造業がESG経営に取り組むうえではカーボンニュートラルが重要

ESGにおいて環境を意味する、E(Environment)では、各国は持続可能な社会の実現に向け、特に喫緊の課題となる気候変動対応を迫られており、カーボンニュートラルに注目が集まっています。

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素やメタンといった、地球の温暖化に影響を及ぼす温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡にすることで、温室効果ガスの排出量をゼロにすることを意味します。

2015年パリ協定以後、各国は温室効果ガス排出削減目標を掲げ、対応を加速しており、日本においても、2050年のカーボンニュートラル目標を標榜しています。

製造業は、事業活動において多くの温室効果ガスを排出しているため、「製造工程で発生する温室効果ガスを抑制する」、「省エネ化や再生可能エネルギーの活用を進める」、「クリーンな製品や技術を開発する」などのように、カーボンニュートラルの達成に向けて積極的に取り組んでいる企業の評価が高まっています。

※関東経済産業局:カーボンニュートラルと地域企業の対応「各国の目標、日本の目標」を加工して作成

出典: 関東経済産業局「カーボンニュートラルと地域企業の対応」

また、国連をはじめ、さまざまなNGO・NPOは、機関投資家や企業に対して、気候変動対応を含んだESG/SDGsに関する取組強化を長年にわたって働きかけています。

SDGs経営については下記の記事で詳しく解説しています。

SDGs経営とは?取り組むことで得られるメリットや実践方法を解説
SDGs経営とは?取り組むことで得られるメリットや実践方法を解説
近年、多くの企業がSDGs経営に注目し、企業が独自にその取り組みを推進する事例も増えてきました。ではなぜ今、SDGs経営が注目されているのでしょうか。今回は、SDGs経営の概要やメリット、取り組み方法などを解説します。

国内大企業でのカーボンニュートラルへの取り組み

国内大企業ではカーボンニュートラルの対応として、気候変動に対応した経営戦略等の情報を開示したり、脱炭素に向けた目標設定などを行なったりしています。

また、自社内で完結させるのではなく、サプライチェーンの上流・下流を含めた対応を標榜しているため、中小企業も対応を迫られているのが現状です。中小企業においても、取引先企業などのサプライチェーンを通じ、温室効果ガスの排出量情報の提供や、排出量削減などの環境対応を求められるケースが増加しています。

サプライチェーンの上流・下流イメージ 地域企業が直面する変化イメージ

※関東経済産業局:カーボンニュートラルと地域企業の対応「Scope3(サプライチェーン)における排出削減のイメージ」「求められるカーボンニュートラルへの対応」を加工して作成

出典: 関東経済産業局「カーボンニュートラルと地域企業の対応」

環境省の「SBT(Science Based Targets)について」によると、サプライヤーを巻き込んだ国内大企業の取として、購入先サプライヤーの90%にSBT目標を設定させるとした建設業や、購入した製品・サービス、資本財、輸送・配送(上流) による排出量の80%に相当するサプライヤーに、SBT目標を設定させるとした医薬品業など、日本企業69社の情報を開示しています。

※SBT(Science Based Targets):パリ協定が求める水準と整合した、5年- 15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標。

ESG経営に取り組むメリット

ESG経営に取り組むメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

企業価値の向上とビジネスチャンスの獲得が見込める

ESG経営に取り組むメリットは、企業価値の向上とビジネスチャンスの獲得に繋がることです。ESG経営には、企業が自社の利益だけを追求するのではなく、社会全体の課題に対しても積極的に取り組む姿勢が表れており、そこに取り組む企業は取引先や顧客からの信頼が獲得できます。

金融機関からの投資対象になる

国際的にも脱炭素の動きが加速する中で、SDGsやESGに取り組んでいる企業への評価が高くなっていることは前述した通りです。
一方で、カーボンニュートラルなどの環境貢献や持続可能な社会を作るための取り組みができていない企業には、金融機関からの投資対象から外れてしまったり、取引先から除外されるなどマイナス効果が発生する可能性があります。

ESG経営は、企業の中長期的な成長に欠かせなくなっており、ESG投資が活発に行われている今、ESG経営に取り組む企業に投資家や金融機関が投融資する傾向にあります。その結果、設備投資や新規事業への投資といった、将来の企業成長に向けた投資を行いやすく、企業の中長期的な成長に繋がりやすいのです。

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ESG経営やカーボンニュートラルへの取組を進めていくにあたって、「他部署がどのように取り組みを行なっているのかがわからない」「効率的に進めたいけど、どのように進めるべきかわからない」など、ESG経営やカーボンニュートラルへの情報共有に課題感を感じている企業が多くあります。

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