レジリエンスの意味とは?向上させるメリットや高めるポイントについて紹介
社会情勢の変化が激しい現代社会では、困難なことが起きても柔軟に乗り越えられる能力「レジリエンス」の必要性が高まっています。
しかし「レジリエンスって何?どんなメリットがあるの?」「この能力を高めるために何をしたらいいの?」などの疑問を抱く人も多いでしょう。
この記事では、レジリエンスの概要や重要性、レジリエンス能力が高い人・低い人の特徴について解説します。
記事の後半では、レジリエンスの高い組織を構築するポイントもご紹介するので「優秀な人材を増やし、企業成長に繋げたい」と考えている方もぜひ参考にしてみてください。
目次
レジリエンスの意味
レジリエンス(resilience)とは、困難なことがあってもしなやかに乗り越えられる「精神的回復力」のことを意味します。「回復力」や「しなやかさ」と直訳される心理学用語です。
著しい変化が伴うVUCA(ブーカ)時代には、ビジネスの現場でもレジリエンスの高さが重要視されています。VUCA時代とは、社会変化が次々と起こる2010年代を示す言葉です。
これまでの常識が通用しないことも多く、近い将来をも予測しにくいため、あらゆる環境変化に柔軟に対応できる人こそが活躍できるとされています。
レジリエンスの重要性
ここ数年では主に、ビジネスの現場でレジリエンスの重要性が注目されています。レジリエンスが高い人は精神的回復力が優れているため、トラブルや困難な場面に直面しても、速やかに立ち直ることが可能です。
一方レジリエンスが低い人は、大きなストレスを受けると挫折をしたり、長期的に悪い影響を受け続けたりしてモチベーションが低下することもあるでしょう。
組織全体でレジリエンスの向上を図ることで、企業や社会の急激な変化にも柔軟に対応でき、結果的に企業成長に繋がります。
なお、経済産業省の「「レジリエンス社会の実現」に関する検討の経緯及び今後の方向性」では、レジリエンスの向上を図ることで、災害時にも適応できる強靭な組織を構築できると紹介しています。
ストレス耐性との違い
レジリエンスと混合しやすいワードとして、「ストレス耐性」が挙げられます。
レジリエンスがストレスを感じた後の「精神的な回復力」を示しているのに対し、ストレス耐性は、ストレスにどのくらい耐えられるかといったレベルを指す言葉です。
ストレス耐性が高い人は楽観的であり、打たれ強いという印象があります。一方、レジリエンスの高い人は、ストレスを受容・吸収し、前向きに捉えられることが特徴です。
メンタルヘルスとの違い
メンタルヘルスとは心の健康を意味しており、精神的な負担を可能な限り取り除き、精神疾患にならないように対策をすることです。
一方、レジリエンスは困難な状況に対してどのように適応し、回復するのかを意味します。
レジリエンスは個人の回復力を意味していますが、メンタルヘルスは心の健康状態を保つための他者のサポートである点が大きな違いです。
レジリエンスの因子
レジリエンスについて深く理解するためには、「危険因子」と「保護因子」を知っておく必要があります。
どちらも医療用語ですが、レジリエンスとの関係も強いことから注目を集めているようです。
危険因子・保護因子
レジリエンスにおける「危険因子」とは、困難な状況やストレスをもたらす要因のことを指します。反対に保護因子は、ストレスや逆境から立ち直るための要素のことです。
危険因子 | |
---|---|
保護因子 |
危険因子は心身に大きな負担をかけるため軽減させることが大切です。
具体的には、ネガティブな感情が大きくならないようにコントロールする習慣をつけたり、将来の目標やビジョンを明確化させたり、環境を変えることで心身への負担を軽減できる可能性があります。
また保護因子は心の立ち直りを促す因子のことで、レジリエンスの高さに関係しています。
自身の性格や考え方といった先天的なものから、心の許せる相手(家族や友人、職場の人)の数など後天的なものまであります。特に後天的な因子は、数を増やすことで自身のレジリエンスを高められます。
精神的回復力を構成する3因子
レジリエンスは、下記の3つの因子で構成され、すべてを満たすことで精神的回復力が高まります。
新奇性追求 | 好奇心が強く、チャレンジ精神がある |
---|---|
感情調整 | マイナスな感情を上手くコントロールし、調整する |
肯定的な未来志向 | 明確な夢や目標を持ち、それに向かって努力ができる |
3因子の必要条件を満たしている人は、レジリエンスが高いと言えます。
レジリエンスが高い人の特徴
レジリエンスが高い人はどのような特徴を持つのでしょうか。ここでは、レジリエンスが高い人の特徴をご紹介します。
何事にもチャレンジしようとする
レジリエンスが高い人は、あらゆることに興味を持ってリサーチをしたり勉強したりと行動に移す傾向にあります。
また、「面倒だな」「時間がかかりそう」といったネガティブな感情を抱きにくく、前向きに捉えやすいことも特徴です。
何度失敗を繰り返しても挑戦し続けて、困難を乗り越えられることもレジリエンスが高い人の特徴だと言えるでしょう。
多様な考え方ができる
レジリエンスが高い人は、何に対しても柔軟に考えることができます。
人は、性別や人種、学歴、価値観などさまざまな違いを持ちますが、レジリエンスの高い人は相手を受け止め、尊重することが可能です。
対人関係だけではなく、トラブルが起きたときにも柔軟に捉えて突破口を切り開くことができます。多様な考え方ができるので、レジリエンスが高ければ、人生の選択肢が広がるでしょう。
自己肯定感が高い
レジリエンスの高い人は、自尊感情が養われている傾向にあります。
自尊感情とは、自分に対して抱くポジティブな感情のことです。自分の存在価値を高く評価し、何事にも肯定的に捉えることができます。
そのため、大きな失敗や挫折をしても「自分ならできる」と自身に言い聞かせ、苦しい状態であってもポジティブで居られます。
物事の本質と向き合うことができる
レジリエンスの高い人は、物事の本質を受け止めて正面から向き合うことができます。
失敗や困難なことが次々と立ちはだかる状況下でも、事実から目を背けず向き合い、糧にすることが可能です。
「物事の本質に向き合うことこそが、自身の成長に繋がる」と理解し、課題を乗り越える際の原動力にしている傾向にあります。
自分を卑下することをしない
レジリエンスの高い人は、ありのままの自分を受け入れて「価値がある人間」だと自負していることが特徴として挙げられます。
そのため、何事に対しても自信を持っているため、自分を低い位置に引き下げることはありません。
「どうせ私なんて」が口癖の方は、レジリエンスの高め方を知ることで自分を認めてあげられるきっかけとなるでしょう。
レジリエンスが低い人の特徴
レジリエンスが低い人は、どのような特徴を持つのかを下記の3点から解説します。
- 気持ちの切り替えがうまくできない
- 自分にも相手にも厳しい
- 悩み事を抱え込んでしまう
レジリエンスが低いと心が折れやすく、逆境や困難、ストレスに対して適応できない傾向にあります。
気持ちの切り替えがうまくできない
レジリエンスが低い人は困難や課題に直面すると、思考がマイナスに向かう傾向にあります。
上手く気持ちを切り替えられないので、いつまでも引きずって、深く落ち込んでしまう人もいるでしょう。大きなミスや失敗をすると、立ち直れず挫折に繋がるケースもあります。
自分にも相手にも厳しい
レジリエンスが低い場合、考え方が否定的になりやすく、誰に対しても厳しい意見を持っています。
また、自分の物差しで他人を評価し、自分よりも仕事ができない相手を見下したり、蔑んだりすることもあるようです。
レジリエンスの高い人は常に肯定的な考え方ですので、基本的に自分や他人が傷つくような言葉を発することはありません。
悩み事を抱え込んでしまう
レジリエンスの低い人は、他人に頼ることが苦手なため、自分ひとりで悩みを抱え込んでしまいます。過去のトラウマを抱えていることも多く、何事に対しても不安視する傾向にあります。
また、他責思考な人が多いため「失敗したのは〇〇さんのせいだ」「最新のパソコンだったら、こんなミスは起きなかった」など常に不満を抱いているのも特徴の一つです。
レジリエンス向上のメリット
レジリエンスを高めることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、4つの視点からレジリエンス向上のメリットを解説します。
何事も前向きに捉えることができる
レジリエンスを高めることで、何事に対しても前向きに捉えられるようになります。
たとえば、人間関係が良好ではなかったり、体調を崩していたりしても、何か解決策があるのではないかと正面から課題に向き合うことができるのです。
レジリエンスが高い人は、「解決策は一つとは限らない」と知っています。レジリエンスを高めると、自分に最適な方法を常に探す癖が身に付き、最適な策を見つけられるようになるでしょう。
ストレスがたまりにくい
レジリエンスが高い人は、自分がストレスを受けたときに、そのストレスの度合いに応じて自分を労わることが可能です。
そのため「長期的に同じことに悩まされている」「ストレスが蓄積して限界を迎える」というケースが少なくなります。
現代社会でストレス自体を減らすことは難しいでしょう。しかし、レジリエンスを高めれば、ストレスを受けた後に適切に対処できるようになります。
モチベーションを高く保つことができる
優れたレジリエンスを持つ人は「自分ならできる」と信じているため、何度失敗を繰り返しても、高いモチベーションを維持できます。
たとえ成果が出なかったとしても「この対応ができたのは素晴らしかった」「この点は良かった」というように自分の行動をふり返り、認められるようになります。
そのため、仕事に対して成功だけでなく失敗も含め、やりがいや充実感を得やすくなります。
視野が広がる・柔軟な考え方ができる
レジリエンスを高めることで、楽観的に物事を把握できるようになります。
その結果、チャレンジ精神が旺盛になり「これにも挑戦してみたい」「この業務を取り入れたらいいかも」など視野が広くなり柔軟な考え方ができるようになります。
成功体験を積み重ねた結果、万が一、失敗しても「自分なら何度でも立ち直ることができる」といった自信を持てるため積極的に挑戦できます。
高めるために重要なレジリエンスコンピテンシー
レジリエンスを高めるためには「レジリエンスコンピテンシー」について深く知る必要があります。
まずコンピテンシー(competency)とは、成果を生み出す優秀な人材に共通する行動特性のことです。優れた人材は、同じような思考・行動パターンを実行し、成果を上げているという考えになります。
この行動特性である「コンピテンシー」を押さえることで、レジリエンスを比較的簡単に高められるのではないかとされています。
6つの要素 | 能力 |
---|---|
自己認識 | 自分の思考・行動・感情を深く理解する能力 |
セルフコントロール | 理想の結果を導き出すために自分の思考・行動・感情を変化させる能力 |
現実的楽観性 | ポジティブなことに気づき、自分をコントロールしながら目的達成へと導く能力 |
精神的柔軟性 | 状況を多角的に判断し、柔軟に対応する能力 |
キャラクターの強み・自己効力感(キャラクター・ストレングス) | 自分の強みを理解し、その能力を最大限に発揮しながら人生を創出する能力 |
人とのつながり、関係性 | 強い信頼関係を築き、維持させる能力 |
パフォーマー特有の思考や行動パターンを深く知り、取り入れていくことで次第にレジリエンスを高められるでしょう。
コンピテンシーについて詳しくは下記記事をご覧ください。
企業全体でレジリエンス向上させるポイント
ここまでは、個人向けにレジリエンスを向上させる方法を解説しました。この章では、企業全体でレジリエンスを高めるポイントについてご紹介します。
- ビジョンを共有し社内全体での理解を深める
- 社員教育のための環境を整備する
- コミュニケーションツールを活用する
ビジョンを共有し社内全体での理解を深める
企業全体でレジリエンスの向上を目指す場合、社内で共有をして理解を深めましょう。
具体的には「レジリエンスとは一体何か」「どうしてレジリエンスの向上を目指すのか」など、目標やスキームを従業員一人一人が理解しておかなければなりません。
従業員のレジリエンスが低下している企業の多くは、ビジョンや今後の見通しが曖昧になっている傾向にあります。
実際に厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概況」では、退職を検討した人の6.3%が「会社の将来が不安だった」と回答していることが明らかになりました。
このことから、企業が目指すものやビジョンを社内全体で共有し、理解したうえで一丸となって取り組まなければならないことが分かります。
特にレジリエンスは、従業員の精神的な部分を改善するものですので、経営層だけが理解して進めても浸透しにくいと言えるでしょう。
社員教育のための環境を整備する
レジリエンスの高い人材を育成するためには、環境を整えることが大切です。
たとえば、会議の前に場を和ませるアイスブレイクの時間を設けてみる、発言や相談がしやすいように情報共有ツールを導入してみる、といったことが挙げられます。
コミュニケーションツールを活用する
従業員同士が円滑なコミュニケーションを図り、エンゲージメントを高めることで、社員の自己肯定感の向上に繋がります。
従業員同士が深い繋がりを持った関係性であれば、情報共有もスムーズに行えるでしょう。その結果、生産性の向上や、離職率の低下などにも期待できます。
在宅ワークを取り入れて「従業員同士のコミュニケーションが減った」と感じているなら、オンライン上で気軽に情報共有ができるツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
シンプルなナレッジ共有ツール「Qast」なら、従業員同士のコミュニケーションの円滑化を実現できます。
「Qast」は、Q&Aとwiki機能を搭載し、従業員が抱える疑問や悩みを瞬時に解決へと導くことが可能です。ツールを導入することで明確な道筋が提示され、安心して業務に集中することができるでしょう。
まとめ
レジリエンスとは、ストレスを受容・吸収し、適応できる柔軟な能力のことを指します。
移り変わりの激しい現代では、環境の変化に伴い、従業員のモチベーションが低下したり、社内全体の活気が悪くなったりする可能性もあるでしょう。
そのような場面でも従業員一人一人のレジリエンスが高ければ、環境や社会の変化に左右されず普段と変わらないパフォーマンスを発揮できます。
「Qast」を活用して、従業員同士で積極的にコミュニケーションを図り、組織全体のレジリエンス向上にお役立てください。