製造業で進む高齢化と「技能継承」問題にどう向き合うべきか

日本の人口は減少局面と超高齢化を迎えており、2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台になると推計されています。

いわずもがな、ものづくり産業においても高齢化が進み、特に熟練者の技能継承については問題を抱えています。「技能継承に問題がある」と考えている事業所は産業別で製造業が86.5%と最も高い結果となりました。

ここでは、2019年版ものづくり白書をベースに、製造業における「技術継承」問題について読み解いていきます。

技能継承に問題がある事業所

引用元: 経済産業省「2019年版ものづくり白書」

製造業における技能継承の問題とは?

製造業における技能継承には大きく2つの問題があります。

1つは技能継承を行う人材がおらず、仕組みがないことです。少子高齢化によって、これまでの事業を支えてきた職人が引退し、継承する人が減っています。また、受け継ぐ人も人材不足のため減っています。さらに、企業の中に継承する仕組みが無いことも技能継承が進まない理由の1つです。

2つ目はITの発展です。IT設備があれば国内製造でなくても近い品質の製品が製造できてしまうため、技術の海外流出や技能による付加価値の低下を招きます。

技能と技術の違い

「技能」と「技術」は近い意味で使われることがありますが、厳密には異なります。技能はこれまで培ってきた属人的な能力のことで、技術は物事を処理する手段のことをいいます。技能は継承しにくく、技術は継承しやすいのです。

「技能継承に問題がある」とする企業が「2007年問題」を上回る事態に

製造業では、いわゆる団塊の世代が定年を迎え熟練者の技能や技術をどのように継承していくか等の問題=「2007年問題」が発生しました。

2007年時は、製造業の事業所の過半数(51.6%)が「技能継承に問題がある」とし注目を集めましたが、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)」により、65歳までの高年齢者雇用確保措置義務化を内容とする改正がなされたことから、団塊の世代の多くが雇用延長によって引き続きものづくりの世界にとどまったことで、問題は一旦回避されたようにみえました。

また、これらの人々が65歳となる2012年以降の対応=「2012年問題」に再び注目が集まりましたが、リーマン・ショックによる社会問題により、あまり顕在化することはありませんでした。

その後も、高齢技能者が大きく減少することはなく推移していましたが、最近になって「技能継承に問題がある」という企業が2007年当時を上回るようになってきました。

今後の日本の製造業について、以下記事で詳しく触れております。併せてご覧ください。

製造業の現状と課題とは?事業環境の変化と動向を詳しく解説
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製造業における主力製品づくりのキーパーソン=重要な役割を果たした人材の定義

製造業ではキーパーソンの位置づけとして、「高精度の加工・組立ができる熟練技能者」をあげる企業が21.5%と最も多く、次いで「工場管理・作業者の指導ができる工場管理者層(17.9%)」、「生産現場の監督ができるリーダー的技能者(17.2%)」となりました。これら、「技能系人材をあげる割合(51.7%)」が「技術系人材(24.4%)」を大幅に上回っており、企業規模が小さくなるほど、「熟練技能者」の果たす役割は大きくなっていることがわかります。

主力製品の生産に重要な役割を果たした人材

引用元: 経済産業省「2019年版ものづくり白書」

製造業における技能継承の重要性

技能は一度喪失すると取り戻すのが容易ではなく、その損失は経営に大きな打撃を与えうるものだと言われています。

経済産業省の「ものづくり人材の確保と育成」によると、技能継承を重要と感じている企業は94%、重要性を感じていない企業は4%に留まりました。

重要と感じている企業がほとんどの一方で、 将来の技能継承については8割の企業が、不安があると認識しています。

技能継承への企業意識

引用元: 経済産業省企業「ものづくり人材の確保と育成」

さらに自社の技能継承がうまくいっているかの質問に対しては、中小企業では「うまくいっていない(54.3%)」が「うまくいっている(44.5%)」を上回っており、反対に大企業では「うまくいっている(53.1%)」と技能継承がうまくいっていると認識しているという結果となりました。

技能継承の成果の認識

引用元: 経済産業省企業「ものづくり人材の確保と育成」

製造業における技能継承と生産性の関係

技能継承の取組の成果が出た企業と出ていない企業において、「他社と比べた場合の自社の労働生産性」の調査をしたところ、「生産性が高い」と回答した企業は、「技能継承がうまくいっている等企業」が35.8%、「技能継承がうまくいっていない等企業」は19.2%と、16.6ポイントもの差が出た結果となりました。

この結果から、技能継承に成功している企業は、生産性も上がっていると認識していることがわかります。

他社と比べた労働生産性と技能継承の成果

引用元: 経済産業省企業「ものづくり人材の確保と育成」

生産性の向上に成功すると、労働者不足への対応やワークライフバランスの実現により従業員が働きやすくなる、といったメリットが生まれます。詳しくは以下の記事で解説しています。

生産性向上とは?意味や取り組み方などを解説
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少子高齢化により将来の労働人口減少が見込まれる日本。多くの企業では人材の確保と共に一人あたりの生産性の向上が大きな課題となっていますが、そもそも生産性とはどのように定義されるものなのでしょうか。また、具体的にどのような施策に取り組めば良いのでしょうか。

製造業界で技能継承が進みづらい背景とは

技能継承は生産性との相関からも重要だと感じている企業が多いことがわかりますが、一方でなぜ、技能継承が進みづらいのでしょうか。

ものづくりにおける「技術」と「技能」が異なるため

1つはものづくりにおける技術と技能の性質の違いがあるでしょう。

ものづくりにおいては技能と技術は両軸となるものです。技術と技能を一体的に扱うことも多いですが、この2つは本質的な違いがあり、ものづくり産業においては特に違いが顕著です。

技術は、図面、数式、文章などの客観的な表現によって記録され伝えられる「形式知」を主体とし、その人を離れて、伝達・伝播される一方で、技能は「暗黙知」を主体とする能力だといえます。その人のこれまでの知見・経験を通じて人から人へと継承されます。

「技能の継承」がうまく進まない点はここにあり、技術と違い、技能の習得・継承には、長い時間を必要とするためです。

技能継承者同士の世代が離れているため

もう1つは、技能の伝え手と受け手の年齢構成です。

年齢構成別の技能継承の成果

引用元: 経済産業省企業「ものづくり人材の確保と育成」

年齢構成別の技能継承の成果をみると、ものづくり企業における人材の年齢構成については、技能継承が「うまくいっている等企業」では、「若手中心」「各世代均等」「中堅中心」と回答した企業の割合が大きく、技能の受け手と伝え手の世代が近いことから、技能継承が円滑に進みやすい年齢構成となっている企業の割合が高いことがわかりました。

一方、技能継承が「うまくいっていない等企業」では、「中堅不足」「ベテラン中心」と回答した企業の割合が大きくなるなど、技能の受け手となる若手や中堅世代が少ない年齢構成と回答した企業の割合が多いです。

まとめると、技能継承が「うまくいっている等企業」は人材の年齢構成のバランスが良く、技能継承が「うまくいっていない等企業」はベテランの割合が高い傾向があることがわかりました。

また、年齢構成を企業規模別にみてみると、大企業では「中堅不足」、中小企業では「ベテラン中心」が最も多く、いずれにおいても若手が少なく、熟練技能者が多い状態、ひいてはものづくり人材の高齢化が進んでいるといえるでしょう。

技能継承における熟練技能者が果たす役割とは

下図より、60歳以上のものづくり人材が果たす役割についてみたところ、技能継承が「うまくいっている等企業」では「若い人への技術・技能の指導役(67.0%)」が最も高いのに対して、技能継承がうまくいっていない等企業では、「製造・組立作業を担う技能者(71.6%)」が最も高いことがわかります。

技能継承が「うまくいっている等企業」では熟練技能者を現場で活用するのと同時に、若者への技能の伝授と役割を位置付けていることがわかります。

60歳以上のものづくり人材が果たす役割

引用元: 経済産業省企業「ものづくり人材の確保と育成」

製造業は技能継承をどう取り組むべきか

下図をみると、技能継承を進めるための取組については、技能継承が「うまくいっている等企業」と「うまくいっていない等企業」のどちらも、「再雇用や勤務延長などにより高年齢作業員に継続して勤務してもらう」と回答した割合が最も高く、次いで、「継承すべき技能の見える化(テキスト化・マニュアル化・IT化)を図る」、「技能継承の対象となる者を選抜して訓練する」と回答した割合が高くなりました。

さらに細かくみると、技能継承が「うまくいっている等企業」では、「継承すべき技能の見える化(テキスト化・マニュアル化・IT化)を図る」が60.6%と、「うまくいっていない等企業」と比較すると、48.6%と大きな差が生じていることがわかります。

それ以外にも、「技能継承の指導者に対して「教える」ことに関する訓練を実施する」について16.1%、「会社内外を問わず熟年技能者を講師として勉強会を開催する」について12.1%、「技能承継の指導者を選抜する」について10.4%など、技能を実際に教えていくために必要なツールやノウハウ、体制の整備等の取組を行っている傾向がわかりました。特に大企業においては、技能を確実に継承させるために、よりきめ細やかな取組を多く行っていることが結果としてわかりました。

技能継承を進めるための取組 企業規模別

引用元: 経済産業省企業「ものづくり人材の確保と育成」

技能継承のステップ1・技術熟練者の抜擢

技能を引き継ぐ際には、まず誰のどんな技術を引き継ぐのかを定める必要があります。技術者の暗黙知の部分を継承するため、引き継ぐべき技術を持っており、マニュアル化や新人指導に当てられる技術者を抜擢する必要があります。

また、抜擢した技術者に対して継承の必要性の教育と協力の依頼も重要です。

技能継承のステップ2・技能の見える化と蓄積

技術者の選抜が完了したら、次にどのような技能を継承するかを決めていきます。このとき、口頭や見様見真似では継承がなかなか進みません。継承する技能を「見える化」し、ナレッジとして蓄積していきます。

技能を見える化する方法として、ナレッジマネジメントツールを利用するとスムーズに進められます。
ツールを導入する際は誰でも簡単に利用できるか、蓄積したナレッジを探しやすいか、といった点で探すと上手く進みます。

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