EVMとはどんな手法?プロジェクトでの活用方法や注意点について紹介
プロジェクト管理にはさまざまな手法があります。EVMもプロジェクト管理手法の一つであり、プロジェクトのコストを把握しながら進捗管理を行うのに有効です。
ここでは、EVMの概要とメリット、EVMでのプロジェクト管理方法をご紹介します。
EVMとは?
EVMとは、「Earned Value Management」の頭文字を取った言葉で、プロジェクトの進捗をコストや成果ベースで管理するプロジェクト管理手法です。
EVMでは、PV(出来高計画値)、AC(コスト実績値)、EV(出来高実績値)、BAC(完成時総予算)と呼ばれる指標でプロジェクトのコストを可視化し、進捗管理を行います。
EVMを活用するメリット
EVMを活用することで得られる3つのメリットを解説します。
コストと進捗を同時に管理できる
プロジェクトを遂行するうえでスケジュールとともに重要になるのがコストです。予定したスケジュール通りにプロジェクトが完了したとしても、コストが超過していては、プロジェクトの目的を達成したとはいえません。
EVMでプロジェクト管理を行えば、プロジェクトにかかるコストと進捗を同時に管理できるため、プロジェクトの遅延とコスト超過の両方を防ぎながらプロジェクトを遂行できます。
プロジェクトの進捗予測ができる
EVMでは、プロジェクトの進捗をコストという客観的な数値で管理します。
プロジェクト管理に客観的な数値を用いることのメリットは、これまでのデータを利用してプロジェクトの進捗予測ができる点です。長期的なプロジェクトになるほどスケジュールのズレが発生した際の進捗予測が難しいものですが、EVMを用いれば精度の高い進捗予測が可能になります。
リスクの早期発見・素早い対応が可能になる
プロジェクトに遅延はつきものですが、後工程でリカバリー可能かの判断は難しいものです。EVMであれば、客観的な数値でリカバリー可能かの判断ができるため、リカバリーできない場合に早期に対応ができます。
また、現状では遅延が発生していなくても、現在の実績だと後工程で遅延が発生する可能性がある、というようなリスクの予測も可能になります。
EVMを構成する基本要素
前述の通り、EVMはPV(出来高計画値)、AC(コスト実績値)、EV(出来高実績値)、BAC(完成時総予算)の4つの基本要素でプロジェクトを管理します。それぞれの要素の意味を解説します。
PV(Planned Value)
PV(Planned Value)は、日本語では「出来高計画値」と呼ばれ、特定時点での計画上の予算コストを指します。EVMで進捗管理する際には、このPVがよく用いられます。
たとえば、6ヵ月間の開発プロジェクトで600万円の予算が見積もられている場合には、3ヵ月時点でのPVは300万円です。
AC(Actual Cost)
AC(Actual Cost)は、日本語では「コスト実績値」と呼ばれ、プロジェクトの遂行にかかったコストの実数値を指します。PVやEVと比べることで、プロジェクトの進捗度合いを把握できます。
たとえば、1ヵ月間時点でのPVが100万円の場合、ACが50万円であれば順調、150万円であればコスト超過が発生していることがわかります。
EV(Earned Value)
EV(Earned Value)は、日本語では「出来高実績値」と呼ばれ、出来高ベースでのプロジェクトの実績値を指します。実際の成果をコストに置き換えた値であり、PVと比較して進捗を把握できる重要な指標になります。
たとえば、6ヵ月間の開発プロジェクトで6つの機能を実装する必要があり、600万円の予算が見積もられている場合、1ヵ月で1つの機能を実装できた時のEVは100万円です。一方、3ヵ月時点で2つの機能しか実装できていない場合、EVは200万円となります。
PVと比較すると、前者はPV100万円に対しEVが100万円なので計画通り、後者はPV300万円に対しEV200万円なので遅延が発生していると判断できます。
BAC(Budget at Completion)
BAC(Budget at Completion)は、日本語では「完成時総予算」と呼ばれ、プロジェクトに割り当てられた総予算を指します。BACはプロジェクト計画時に見積もられ、BACをもとにPVが算出されます。
6ヵ月間の開発プロジェクトで600万円の予算が見積もられている場合、BACは600万円です。
EVに必要な指標・計算式
EVMでプロジェクトの情報を管理する際によく用いられる指標と計算式を解説します。
SV(Schedule Variance)
SV(Schedule Variance)は、日本語で「スケジュール差異」と呼ばれ、計画と実際のスケジュールのギャップを表します。SVはEVとPVの差で求められ、SVがマイナスの場合は遅延が発生していると判断できます。
【計算式】
SV = EV – PV
CV(Cost Variance)
CV(Cost Variance)は、日本語で「コスト差異」と呼ばれ、計画と実際のコストのギャップを表します。CVはEVとACの差で求められ、CVがマイナスの場合はコスト超過が発生していると判断できます。
【計算式】
CV = EV – AC
CPI(Cost Performance Index)
CPI(Cost Performance Index)は、日本語で「コスト効率指数」と呼ばれ、プロジェクトにおけるコスト効率を表します。EV割るACで求められ、CPIが1より大きければコスト効率が良い、1より小さければコスト効率が悪いと判断できます。
【計算式】
CPI = EV / AC
SPI(Schedule Performance Index)
SPI(Schedule Performance Index)は、日本語で「スケジュール効率指数」と呼ばれ、プロジェクトにおけるスケジュール効率を表します。EV割るPVで求められ、SPIが1より大きければスケジュール効率が良い、1より小さければスケジュール効率が悪いと判断できます。
【計算式】
SPI = EV / PV
EAC(Estimate At Completion)
EAC(Estimate At Completion) は、日本語で「完了時コスト予測」と呼ばれ、実績ベースでのプロジェクト完了時のコスト予測値を表します。ACとETCの差で求められ、最終的なプロジェクト完了のコストがいくらになるかを予測する際に用いられます。
【計算式】
EAC = AC + ETC
VAC(Variance At Completion)
VAC(Variance At Completion)は、日本語で「完了時コスト差異」と呼ばれ、計画と実際での最終的なコストのギャップを表します。BACとEACの差で求められ、VACがプラスの場合には当初計画内のコスト、マイナスの場合には当初計画以上のコストがかかる見込みであると予測できます。
【計算式】
VAC = BAC - EAC
ETC(Estimate To Completion)
ETC(Estimate To Completion)は、日本語で「残作業コスト予測」と呼ばれ、プロジェクト完了までに残っている作業のコストを表します。BACからEVを引いた残作業をCPIで割ることで求められ、プロジェクトを完了するのに後どれぐらいのコストがかかるのかを予測する際に用いられます。
【計算式】
ETC = (BAC – EV) / CPI
EVMを作成する流れ
EVMでプロジェクト管理を行う際のポイントも見ていきましょう。
作業の構造化・PVを設定する
EVMの作成には、BACやPVの設定が必要です。適切なBACやPVの設定には、プロジェクトの工数見積もりの精度が重要となります。
工数見積もりの精度を高めるためには、WBSを用いて構造的にタスクを把握することが有効です。BAC・PVを設定する際には、まずWBSを用いた工数見積もりから始めましょう。
CVを算出する
EVMでプロジェクト管理を行う大きなメリットは、プロジェクトの進捗とコストを絡めて管理できる点にあります。CVを算出すると、実際にかかったコストに対する成果を可視化できます。定期的にCVを確認していくことで、プロジェクトのコストパフォーマンスを把握でき、適切な見直し・改善ができるようになります。
PVとEV・ACの差を確認する
PVとEV、PVとACの差をそれぞれ比較すると、比較時点でプロジェクトに遅延がないか、コスト超過が発生していないかを確認できます。
PVとEV、PVとACの差を確認しながらプロジェクトを進行すれば、進捗遅れやコスト超過への対策を早期に実施でき、安定したプロジェクト達成に繋がるでしょう。
EVMグラフを作成する
EVMは、グラフ化することでより視覚的にプロジェクトの進捗とコストを把握できるようになります。グラフを書く際には、縦軸を金額、横軸を時間とし、PV、EV、ACをそれぞれ図式化します。
グラフを作成すると、PVとEV、PVとACのギャップやギャップの大きさをすぐに把握できるため、よりEVMでの管理を行いやすくなるでしょう。
プロジェクト管理にはツールの活用がおすすめ
プロジェクト管理にはEVM以外にも多様な方法があり、プロジェクト内容などによって最適な方法はさまざまですが、いずれの方法においてもツールを活用した管理がおすすめです。プロジェクト管理ツールを用いれば、プロジェクト内の情報をスムーズに共有でき、プロジェクトを円滑に進行できます。
とりわけ、社内におけるナレッジ・情報共有に適したナレッジ経営クラウド「Qast」は、業界や職種を問わず幅広い分野でのプロジェクト管理に活用できます。Qastはナレッジの蓄積に適したツールのため、過去のプロジェクト情報をナレッジとして蓄積できる点も大きな魅力です。
プロジェクト管理の見直し・改善を行う際は、ぜひQastの導入をご検討ください。
その他、おすすめのプロジェクト管理ツールは以下の記事でご紹介しています。
まとめ
EVMとは、プロジェクトの進捗をコストや成果ベースで管理するプロジェクト管理手法です。プロジェクトの進捗とコストを同時に管理でき、実績値をもとにした進捗予測ができる点が大きなメリットです。進捗予測ができれば、プロジェクトの遅延やコスト超過を早期に発見し、素早く対処できるようになります。
ここで解説したEVMの指標・計算式やポイントを参考に、EVMで現場のプロジェクト管理を見直してみましょう。