リスクアセスメントとは?必要性や正しい進め方について詳しく解説
現場における労災リスクを可視化し従業員の安全確保や稼働の安定化を図るためには、リスクアセスメントの取り組みが重要となります。
しかし、リスクアセスメントという言葉自体は知っているものの、導入によって得られる効果や具体的な進め方までは知らないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、リスクアセスメントの概要やメリット、正しい進め方について解説します。
目次
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、厚生労働省の定義では「事業場にある危険性や有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の決定の一連の手順をいい、事業者は、その結果に基づいて適切な労働災害防止対策を講じる必要があります」とされています。
つまり、リスクアセスメントとは現場に潜むリスクを可視化し、リスク対策を行って従業員の安全を確保する取り組みです。事業者は従業員の安全を守る義務があり、適切にリスクアセスメントを行う必要があります。
リスクアセスメントはなぜ必要?
事業者によるリスクアセスメントの実施は労働安全衛生法で努力義務化されていますが、リスクアセスメントが必要となる理由は他にもあります。それは、事業活動の安定的な継続です。
労災が発生すれば、従業員のモチベーション低下や下請け先からの信頼低下、購買者や社会からの信用下落などに繋がります。つまり、一度労災が発生するだけで事業活動の継続が難しくなる可能性が十分あるのです。
事業活動継続のリスクとなる労災を防ぎ、安定的な継続を実現するためには、リスクアセスメントが必須といえます。
特に、技術の発展により多様な機械設備や化学物質などを取り扱う昨今では、リスクアセスメントを行い労災を未然に防止する重要性が非常に高まっています。
リスクアセスメントのメリット
リスクアセスメントの導入によって得られるメリットをさらに具体的に見ていきましょう。
リスクの明確化が図れる
リスクアセスメントを行えば、現場に潜むリスクを明確化できます。
リスクアセスメントにはリスクに対する適切な対策の実施までが含まれていますが、内容によっては対策が難しい場合もあるでしょう。
しかし、リスクが明確になっていれば、従業員がリスクを認識して作業を行うようになるため、一定の労災防止効果が得られます。
優先順位を決めることができる
リスク対策にはコストがつきものであり、全てのリスク対策を行うことは困難でしょう。しかし、リスクに対して優先順位を付け、許容できないリスクに対して優先的に対策を取れば、合理的なリスク対策が行えます。
安全な労働環境が整えられる
リスクアセスメントを実行すれば、安全な労働環境が整います。安全な労働環境を整備できれば、安定した稼働を確保できるほか、従業員のモチベーションアップや満足度向上といった効果も得られます。それにより、従業員の離職率低下や定着率向上も実現するでしょう。
優秀な人材を確保できる
リスクアセスメントの徹底により従業員の安全に配慮した労働環境を提供してくれる企業は、求職者にとって非常に魅力的です。採用の場で取り組みの内容を具体的にアピールすれば、応募者数の増加と優秀な人材の確保が実現するでしょう。
リスクに対する意識が高まる
業務経験の浅い従業員は熟練の従業員よりもリスクに対する意識が低く、労災が発生しやすい状態といえます。しかし、職場全体でリスクを共有する場があれば、業務経験の浅い従業員のリスク意識が向上し、労災の防止に繋がるでしょう。
リスクアセスメントの進め方
では、実際にリスクアセスメントを実行するために、その具体的な進め方を見てみましょう。
リスクの特定、可視化をする
まずは、リスクの特定と可視化を行います。具体的には、機械や設備、原材料、作業行動、環境などについて、誤った行動や意図しない行動、環境変化などが発生した場合のリスクを洗い出します。
リスクを洗い出す際には、「~なので、~になる」というように、因果関係を簡潔にまとめると良いでしょう。
リスクの見積もり・優先順位つけ
特定・可視化したリスクの見積もりと優先順位付けを行います。リスクの見積もりは、発生した場合の影響(負傷または疾病の重篤度)と可能性(負傷または疾病の発生可能性)の両面で判断します。
たとえば、有害物質の取り扱いミスで生じる負傷または疾病が命に関わる致命的なものであり、ミスが負傷または疾病に繋がる可能性が極めて高いのであれば、リスク大として優先的に対策すべきでしょう。
リスクの見積もり・優先順位付けを行う際は、現場監督者や作業員など複数の視点で判断することが大切です。複数人で認識を共有しやすいよう、具体的な基準で影響と可能性をランク付けすると良いでしょう。
リスクに対する改善策を考える
見積もり・優先順位付けを行ったリスクに対する改善策を検討します。厚生労働省が公開している手順では、以下の順序で対策を検討するとよいとされています。
- 設計や計画の段階における危険な作業の廃止、変更等
- インターロックの設置等の工学的対策
- マニュアルの整備等の管理的対策
- 個人用保護具の使用
まずは、危険な作業自体を取り除けないかを検討し、取り除くことが難しい場合には機械的にリスクを低減する工学的な機構を導入します。その次にマニュアルや危険予知訓練などによる管理的な対策を実施し、それでも低減しきれないリスクに対しては、保護具での個人的な対策を講じましょう。
リスク回避・改善施策を実施する
リスク回避・改善施策の検討・選択ができたら、実際に施策を実行します。前述した対策の優先順位は、上位にいくほど全体的な見直しや対策導入のコストが大きくなりやすいため実施が難しくなります。
しかし、そのぶんリスク対策の効果は大きくなるため、極力上位の対策を実行するようにしましょう。
実施に関する内容を全体に共有する
リスクアセスメントの実施内容と結果を会社全体に共有します。リスクアセスメントにおいては作業者に依存しない対策の実施はもちろん重要ですが、作業者自身のリスクに対する意識の向上も非常に重要です。
リスクアセスメントは継続的に行い、職場全体のリスクに対する意識の向上を図りましょう。
リスクアセスメントを進めるコツ
リスクアセスメントを行う際に意識すべきポイントを解説します。
現場の声を集める
現場にはさまざまなリスクが潜んでいます。細かいリスクの芽を未然に摘んでおくことが労災の防止に繋がります。
細かいリスクは、日々作業を行っている現場の従業員でしか気付けない場合も多いため、現場の声を集めながらリスクアセスメントを進めると良いでしょう。ヒヤリハット(注1)やKY活動(注2)など、日々現場からの声を集められる施策を導入すれば、効果的なリスクアセスメントと現場のリスクに対する意識向上が図れます。
(注1)重大な事項や災害に繋がる一歩手前の出来事のことを指します。厚生労働省の兵庫労働局では「危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事象のこと」と定義されています。
出典:厚生労働省兵庫労働局「ヒヤリハット活動でリスクアセスメント」
(注2)「危険予知活動」のことを指し、危険(Kiken)の「K」と予知(Yochi)の「Y」、それぞれのアルファベットの頭文字を取って「KY活動」と呼びます。
情報の認知・共有が重要
リスクアセスメントの実施内容や結果を共有する際、周知が行き渡らず現場の作業員に認知されないのでは、適切なリスクアセスメントの効果は得られません。
効果的なリスクアセスメントには、情報の認知・共有が重要です。コミュニケーションツールなどを導入し、全体に周知を徹底できる基盤を構築しましょう。
情報の共有・蓄積にはQastの活用がおすすめ
Qastは、社内の情報やナレッジの共有に適した「ナレッジ経営クラウド」です。リスクアセスメントの実施内容や結果を共有し、現場の声を集める場として活用できます。
Qastには、ファイル内の文字列を検索できる機能やタグ付け機能などが備わっているため、リスクアセスメントの対策にあるマニュアルの整備にも適しています。また、スコアリング機能を活用すれば、リスクアセスメントに貢献している従業員の発見・評価もしやすくなるでしょう。
リスクアセスメントを行う際の情報・ナレッジ共有基盤として、Qastをぜひご活用ください。
まとめ
技術の発展によりさまざまな機械や化学物質を扱う現代においては、リスクアセスメントの重要性がより高まっています。リスクアセスメントを行えば、労災の防止だけでなく、安全な労働環境の提供による人材確保にも繋がります。
貴社でもぜひ、コミュニケーション基盤の整備とリスクアセスメントの実行に取り組み、労災のない安全な職場環境を実現しましょう。