スマートファクトリーをはじめ、製造業においてもDXが急速に進められています。しかし、思うようにDXが進んでいない企業が多いのも実情です。では、製造業においてDXはどのように取り組んでいけば良いのでしょうか。

ここでは、製造業におけるDX推進の方法を、具体的な事例を踏まえて解説します。

製造業におけるDXとは

DX（デジタルトランスフォーメーション）とは、「データやデジタル技術を使って新たな価値を創出していくこと」を意味しています。

製造業は物理的な作業を伴うものであるため、現在もアナログな作業が多くを占める企業は多数あります。しかし、そうしたアナログ作業をデジタル化し効率化を図ることで、より多くの製品の供給や新しい製品の開発など、これまでになかった価値の創出に繋がります。

DXについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

DX（デジタルトランスフォーメーション）推進とは？すぐに導入できるツールも紹介

近年よく見聞きするようになった「DX」（デジタルトランスフォーメーション）という言葉。DXが求められる背景や成功事例を知れば、一過性の流行のようなものではなく、あらゆる業界業種の企業において取り組まなければいけない課題であることがわかるはずです。

製造業でDXが注目されている背景と課題

2025年までにDXが進まなかった場合、最大で年間12兆円もの経済損失が発生するとされる「2025年の崖」と呼ばれる課題が、経済産業省から発表されています。製造業はアナログな作業や管理が多いことから、DX推進において他の業界と比べても特に多くの課題があるとされています。具体的には以下のようなものです。

現場の属人化

製造業においては、品質管理のため「現場」「現物」「現実」の三現主義が重視されていることもあり、属人化が起こりやすい現場が多くあります。現場の人材が定年などで離職した場合、属人化が起きている環境では、業務効率や稼働率の低下が生じかねません。

三現主義について詳しくはこちらをご覧ください。

三現主義とは？情報社会で重要な理由とリモート環境で実践する方法を解説

製造業など品質管理を行うモノづくりの現場を中心に「三現主義」という考え方が重視されてきました。しかし、リモートワークが普及している昨今では、従来通りの体制で三現主義を実践することが難しい状況になっています。今回は、三現主義の概要をあらためてご紹介するとともに、三現主義が情報社会で重要な理由や、リモート環境下で三現主義を実践する方法などを解説します。この記事を参考に、現場環境にぜひ三現主義を取り入れてみてください。

リモートワークなどニューノーマルへの適応

リモートワークや時短勤務など、時代に合った新しい働き方が社会に定着してきています。製造業においてもスタッフ部門に多様な働き方を導入する企業が増えていますが、そうした変化に対応するためにも、DXにより新しい価値観に早急に適応することが求められています。

慢性的な人材不足

経済産業省の調査によると、製造業において確保に課題があるのは「ものづくりを担う技能人材」が突出して多く、慢性的な人手不足に陥っている状況です。人材不足による作業効率の低下を防ぐためにも、DXは効果を発揮します。また、労災の観点からも、現場にIPカメラを設置するなど安全システムの構築にDXが関わるシーンが増えています。

ダイナミック・ケイパビリティ

製造業は、原材料の輸入や製品の輸出により為替など世界情勢の影響を受けやすい面があります。安定したサプライチェーンを構築するためには、ダイナミック・ケイパビリティ（企業変革力）の強化が求められており、その施策の一つとしてDXの重要性が高まっています。

DXを推進するメリット

製造業においてDXを推進すると、主に以下のようなメリットが得られます。

属人化の解消に繋がる

現場の職人が持つノウハウをデジタル化して見える化できれば、現場の属人化解消に繋がります。コミュニケーションツールを導入し、FAQの作成や職人間でのやりとりの蓄積ができれば、より効率的に属人化の解消が実現できるでしょう。

人材不足の解消に繋がる

DXの推進によって業務が効率化できれば、より少ない人数で製造量を担保できるようになります。リモートワークなど多様な働き方を提供できれば、人材の確保もしやすくなるでしょう。

メンテナンスのコストを削減できる

属人化の解消や人材不足の解消によって現場の無駄が削減できれば、特定の職人や外注に頼らずともメンテナンスが行いやすくなり、結果として設備のメンテナンスコスト削減に繋がります。また、DXによって設備の稼働状況や故障の予兆などを見える化できれば、より効率的なメンテナンスを行えるようになります。

社会情勢に適応できる

DX推進によって経営判断に有効な情報をデータとして見える化できれば、ダイナミック・ケイパビリティの強化に繋がります。ダイナミック・ケイパビリティの強化によって、先読みの難しい為替や社会情勢の変動に対応しやすくなり、企業の適応力強化が図れます。

製造業DXの進め方のポイント

製造業DXの推進にはさまざまな課題があり、推進がうまく進まない企業も多くあります。製造業DXの課題を踏まえ、進め方のポイントを解説します。

現場の課題を洗い出す

まずは現場の課題を洗い出すことから始めましょう。現場での課題が見えない場合は、それも課題として挙げられます。製造業ではアナログ作業が多いため、まずはDX推進に必要な情報を見える化するためのデータ収集から着手していくと良いでしょう。

課題に対する解決方法を考案する

洗い出した課題に対し、どのような解決方法があるのかを検討しましょう。DX推進においては、デジタル技術によって効率化が図れるものとそうでないものとを分け、重要度や費用対効果を踏まえた施策を展開することが大切です。すべての施策を一度に展開するのは困難なため、優先順位をつけて取り組むと良いでしょう。

IT人材を確保する

DX推進を行うIT人材が不足している場合は、ITに明るい人材を積極的に雇用するようにしましょう。また、IT教育の環境構築に力を入れ、現場の社員に対してIT教育を施し、現場に合わせたツールを作成できるようになれば、よりDXが進みやすくなります。

現場や課題解決方法に適したツールを採用する

現場や課題の内容を踏まえ、適したツールを導入しましょう。具体例としては、現場の見える化には情報共有ツールやコミュニケーションツール、サプライチェーンの管理にはSCM（Supply Chain Management）などが挙げられます。近年では専門的なプログラミング技術がなくてもツール開発が行えるノーコード・ローコードツールも登場していますので、積極的に活用しましょう。

製造業DXの事例

製造業においてDXがどのように進められているのか、経済産業省の「製造業DX取組事例集」から具体的な事例をご紹介します。

富士通株式会社

富士通株式会社では、FTCP（Flexible Technical Computing Platform）という設計開発プラットフォームを構築しています。FTCPを通してSCM軸とPLM軸を交差させ、ノウハウの蓄積・活用による新しい製品開発を実現している点が特徴です。現場での手戻り減少や品質向上、納期短縮など、さまざまな成果を達成しています。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、「工場IoT」に取り組んでいます。現場や顧客から収集したデータがタイムリーに技術開発にフィードバックできていないという課題を踏まえ、情報を一元管理するIoTプラットフォームを構築しました。構築したプラットフォームを活用し、品質や商品力向上、法規への対応、付加価値向上などに取り組んでいます。

株式会社IHI

株式会社IHIでは、デジタル人材の育成に注力しています。導入すべきツールは何か、またツールをどのように運用すべきかは現場によって異なるため、効果的なDX推進には現場力とIT力を兼ね備えた人材確保が重要です。デジタル人材の育成に注力した結果、幅広いスキルや業務知識を持つ従業員が増え、多様なアイデアが生まれやすい風土の醸成に成功しています。

出典：経済産業省

出典：製造業DX取組事例集

Qastが製造業のDX推進をお手伝いします

製造業のDX推進においては、これまで現場内にとどまっていた情報をいかに見える化していくかが重要となります。その解決策として有効なのが、コミュニケーションやナレッジの蓄積・共有が気軽にできるツールです。

ナレッジ経営クラウド「Qast」は、ナレッジの蓄積に特化したツールであり、コミュニケーション不足の解消やナレッジの蓄積・共有に活用できます。シンプルな操作性が特徴のツールであるため、これまでITツールに触れてこなかった現場の社員にも利用を浸透させやすいでしょう。

DX推進に必要な情報を見える化するため、そしてDX推進を加速させるためのツールとして、ぜひQastの導入を検討してみてください。

まとめ

製造業におけるDXにはさまざまな課題があるものの、これまでアナログな作業・管理が多かったぶん、DXによる成果が大きい業界ともいえます。

技術の進歩が年々急速化している現代においては、DXによる製品開発の効率化もとても重要なポイントです。ここで解説したDX推進の進め方が企業の発展に役立てば幸いです。