新人教育とは?目的や効果的に行うためのポイント、進め方を紹介
人手不足が深刻化する昨今、採用に力を入れている企業は多いでしょう。企業としては採用した人材が早期に定着し独り立ちしてくれることが理想ですが、そのためにはどのような教育をするのがベストなのでしょうか。
この記事では、新人教育の目的や重要性を振り返るとともに、新人教育のコツやポイント、具体的な手法やツールなどをご紹介します。
新人教育とは
新人教育とは、新入社員に社会人としてのマナーや業務に必要な知識・スキルなどを身につけてもらうために行う教育を指します。内容は、新卒や中途、また業界や職種によっても異なり、企業独自の手法で教育を行っているケースもあります。
新人教育の目的や重要性
新人教育の内容はさまざまですが、目的はほぼ同じです。その目的とは、新入社員が早期に定着し、独力で業務を遂行できるようになってもらうことです。
労働人口の減少や働き方改革などを背景に採用競争が激化するなか、せっかくコストをかけて採用した人材がすぐに離職してしまうことは企業にとっては大きな損失となります。
また、新入社員が独り立ちするまでに時間がかかるほど現場の負担は増え、職場環境の悪化やコスト増などさまざまなデメリットが生じます。
企業が安定した経営を維持するためにも、新人教育は非常に重要なプロセスとなっています。
新人教育を行うメリット
新人教育に力を入れるメリットには、主に以下の4点が挙げられます。
戦力化・業務の効率化に繋がる
新人教育を行い早期に新人が独り立ちできれば、組織の戦力が増え、業務の効率化や生産性向上に繋がります。
これまで組織で抱えていた業務を分散できるため、組織全体の負荷が軽減できるでしょう。また、新人の目線で業務を見直していくことで、分かりにくいマニュアルの改善や無駄な工程の削減などの効果も期待できます。
早期離職を防げる
入社したばかりの新入社員は、仕事の流れややり方を把握できていないため、分からないことも多く、疑問がうまれやすいです。
分からないことや疑問に思ったことをスムーズに解消できないことは大きなストレスとなります。そうしたストレスを極力なくせば、早期離職を防ぎ、人材の定着を促進できるでしょう。
また、教育担当者との人間関係も強化できるため、業務で不明点があればすぐに解消できる環境も整えられます。
教育担当者の成長に繋がる
新入社員の教育を担当する社員の成長を促せる点も新人教育の大きなメリットです。新人教育の経験は、そのまま自身の知識・スキルの整理や責任感の醸成に繋がります。
また、コミュニケーションスキルやヒアリングスキルなど、マネジメント層へのキャリアアップに必要な基礎スキルの習得もできるでしょう。
仕事に対してやりがいを感じられる
社員に能動的な行動を促すためには、仕事に対するやりがいを感じてもらう必要があります。
新入社員はまだ会社に入って間もなく、社内環境や業務内容を把握していません。その状態だと、今対応している業務にどのような意義があるのか、どのような業務に繋がっているのかが分からないため、やりがいを感じにくいでしょう。
新人教育をとおして業務の背景や意義を伝え、動機づけすることで、新入社員がやりがいを感じながら業務に対応できるようになります。
新人教育での課題
続いて、多くの現場で発生しがちな新人教育の課題を解説します。
教育担当者の負担が大きく通常業務に影響が出る
新人教育において最も課題となりやすいのが教育担当者の負担です。教育担当者は、通常業務をこなしながら新入社員に業務を教え、疑問をスムーズに解消し、新入社員の業務進捗を管理する必要があります。
しかし、新人教育をしながらこれまでと同じ量の業務をこなすことは難しく、通常業務に影響が出る可能性が高いでしょう。
教育の質に差が出てしまう
新人教育では、年度による教育プログラムの違いや教育担当者のスキルによって教育の質に差が出てしまう場合があります。
また、拠点によっても教育の質に差が出るケースがあります。拠点間で情報が分断されていると、拠点によって持っている情報が異なるため、統一された基準での教育が難しくなるためです。
拠点間で教育の質に差があると、異動が発生した際にスムーズに引き継ぎができないなど、教育以外の課題に発展する恐れもあります。
うまくコミュニケーションが取れない
新人教育においては、新入社員と教育担当者および周囲の社員とのコミュニケーションが非常に重要です。
円滑にコミュニケーションが取れる環境が整えられていないと、新入社員が疑問をスムーズに解消できず、大きなストレスになります。コミュニケーション不足を放置すれば新入社員の早期離職に繋がりかねません。
新人教育を行う際のポイントやコツ
新人教育での課題をふまえ、上手に新人教育を行うためのポイントやコツを解説します。
業務の目的や全体像を明確化し伝える
業務の目的や全体像を把握しているか、いないかで、業務を行う際のやりがいには大きな差が出ます。教育担当者をとおして業務の目的や全体像を明確に伝え、業務の意義を理解したうえで業務に対応してもらいましょう。
心理的安全性の高い職場環境を作る
心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した心理学用語で、チームのメンバーがチーム内でどれだけ率直な発言や行動が取れるかの度合いを意味します。
心理的安全性が高い職場環境を作れば、新入社員も気兼ねなく質問や意見をできるようになるでしょう。
心理的安全性については以下の記事で詳しく解説しています。
新入社員の考え方・価値観を把握する
働き方改革の推進などにより労働への価値観が多様化している現代では、仕事に対する新入社員の考え方を把握することも重要です。
できるだけ独力で業務を進めていきたいのか、細かくフォローを受けながら業務を進めていきたいのか、考え方には人によって差があるため、それぞれの考え方や価値観にあわせた教育を行う必要があります。
マニュアルを用意しておく
新入社員の教育に使用する業務のマニュアルを事前に用意しておきましょう。マニュアルがあれば、業務の一連の流れを把握できるとともに、ミスの防止にも繋がります。新入社員目線でマニュアルを見直すことで、マニュアルの改善も期待できます。
実践的なトレーニングを行う
見たり聞いたりするだけでなく、実務を行って初めて業務が定着します。業務によっては新入社員に実務を任せるリスクが高いものもありますが、その場合でもできる限り実践的なトレーニングができる環境を用意しましょう。実践的なトレーニングができるかできないかで業務の定着スピードに大きな差が出ます。
定期的な振り返りやFBを行う
定期的な振り返りやフィードバックを行い、新入社員ができていること、できていないことを整理しましょう。
その際のポイントは、できていないことばかりを羅列するのではなく、できていることをきちんと評価することです。できていることをきちんと評価してあげれば、それが新入社員の自信に繋がります。
そのうえで、できていないことに対してポジティブな視点でアドバイスするよう心がけましょう。
ツールを導入する
新入社員への教育やコミュニケーションを効率化するためには、ツールの導入がおすすめです。
eラーニングやナレッジマネジメントツールを活用すれば、新入社員が自ら学び疑問を解消できる環境を整備できますし、コミュニケーションツールを活用することで教育状況の可視化や周囲とのコミュニケーションの円滑化に繋がります。
新人教育に用いられる手法
新人教育によく用いられている具体的な手法を4つご紹介します。
OJT
OJT(On the Job Training)とは、日本語では「職場内研修」と訳されます。
実務をとおして新入社員に知識やスキルを身につけてもらう手法で、早期の戦力化に効果を発揮します。
コストをかけずに実践的なトレーニングが積める手法ではありますが、新入社員が放置された状態にならないようフォローを手厚くする必要があるでしょう。
Off-JT
Off-JT(Off the Job Training)とは、職場外研修を意味します。
専門の講師などに依頼し、質の高い教育を体系的に学んでもらう手法です。
教育の質を標準化しやすく、現場の教育担当者の負担を減らせるメリットがありますが、OJTに比べるとコストがかかりやすいのがデメリットです。
集合研修
集合研修とは、対象の新入社員を一同に集めて行う社内研修を指します。
新入社員に社内環境や制度などを説明する際に用いられることが多いでしょう。
同時期に入社した社員が集められるため同期との親交を深めるよい機会となり、新入社員のモチベーションアップや早期離職防止に効果があります。
eラーニング
eラーニングとは、電子化した教材をパソコンやスマホなどで閲覧して行う教育を指します。
テストの実施などにより学習進捗が可視化できるため、インプットとアウトプットの把握がしやすい点が特徴です。
現在では多くのeラーニングサービスが登場しているため、選択肢が多い点もメリットでしょう。
新人教育におすすめのナレッジマネジメントツール
ナレッジマネジメントツールを活用すれば、社内のマニュアルやFAQを整備でき、新人教育を効率的に進められます。
ここでは新人教育におすすめのナレッジマネジメントツールをご紹介します。
Qast
https://qast.jp/【こんな人におすすめ】
【ポイント】
Qastは社内のマニュアル整備やナレッジ蓄積に強みを持つナレッジプラットフォームです。シンプルで誰でも直感的に操作できるツールのため、新入社員でも問題なく活用できるでしょう。
Qastには新入社員が疑問を自己解決できるQ&A機能が備わっており、教育担当者の負担を減らせます。また、業務に関する困りごとや質問を匿名で投稿できる「こましりbox」という機能があり、誰でも気兼ねなく知りたいことへの回答をリクエストできます。
その他、マニュアル整備を効率化するテンプレート機能やTeamsやSlackと連携してコミュニケーションの促進もできるため、新人教育をあらゆる面でサポートしてくれます。
【特徴的な機能】
Google Workspace
https://workspace.google.co.jp/intl/ja/【こんな人におすすめ】
【ポイント】
Google WorkspaceはGoogle社が提供するコラボレーションツールです。Googleアカウントを持っていればすぐに利用できるため、簡単に導入できます。
プライベートでGoogleのサービスを利用している方も多いため、新入社員でもすぐにツールを使いこなせるようになるでしょう。
【特徴的な機能】
サイボウズ Office
https://office.cybozu.co.jp/【こんな人におすすめ】
【ポイント】
サイボウズOfficeは、サイボウズ社が提供するグループウェアです。
マニュアルを保管できるストレージやコミュニケーションに使えるメッセージ・メール・掲示板機能などに加え、スケジュールやワークフローなどさまざまな機能があります。新人教育だけでなく全社で活用できるグループウェアをお探しの方におすすめです。
【特徴的な機能】
まとめ
人手不足の解消には、新しい人材を確保することはもちろん、人材を早期に戦力化することが欠かせません。しかし、せっかく人材を採用したのに「現場が忙しいから」とまともな新人教育が行えないのでは、早期離職に繋がり大きな損失がうまれます。
現場の負担を極力減らしつつ、標準的で高品質な新人教育を行うためには、ツールの活用がおすすめです。この記事でご紹介した新人教育のコツやおすすめのツールを参考に、ぜひ新人教育の充実化を図ってみてください。