エンパワーメントとは?意味や導入メリット、高める方法・ポイントを解説
組織を成長させるうえで欠かせない要素であるエンパワーメント。その施策に取り組み、組織を強化したいとお考えの方が多いのではないでしょうか。しかし、具体的にどのような取り組みをすべきか分からないという方も少なくないと思います。
今回は、エンパワーメントの概要、導入のメリットやデメリット、エンパワーメントを推進する際のポイントなどを解説します。
目次
エンパワーメント(エンパワメント)とは
エンパワーメントとは、英語の「empower」を由来とする言葉で、力や権限の付与という意味があります。20世紀のラテンアメリカを中心とした先住民運動や女性運動などで用いられ、実践されるようになった概念です。
企業・ビジネスにおけるエンパワーメント
企業やビジネスにおいて、エンパワーメントという言葉は主に「権限譲渡」という意味で用いられます。組織や社員に権限を与えることで、彼らや彼らを取り巻く環境の成長を促すことを目的としています。現在では人材育成やマネジメントの手法として多くの企業で注目され、取り入れられています。
教育におけるエンパワーメント
教育におけるエンパワーメントとは、生徒の潜在的な能力や自律性、主体性などを引き出すことを意味します。権利や権限という意味合いからは少し異なりますが、対象の成長を促す取り組みという点では企業・ビジネスにおける意味合いと同様です。
福祉・看護におけるエンパワーメント
福祉・看護におけるエンパワーメントは、患者自身が能動的・積極的に介護や看護を受けるよう促すことを意味します。介護・看護が必要な方に対して一方的に保護を押し付けることは本人の自立を妨げることに繋がるのではないか、という問題提起から生まれた考え方です。
エンパワーメントの歴史
エンパワーメントは、20世紀のブラジルの教育思想家パウロ・フレイレが提唱した概念です。20世紀は、女性であることや黒人であること、貧富の差などによって彼らが持っている能力や思想が抑圧される時代でした。
そんな中、エンパワーメントが持つ「力の付与」という概念が「抑圧からの解放」と結びつき、市民運動や女性運動、人種差別反対運動の中の大きな概念として用いられ、世界的な普及へと繋がりました。
エンパワーメントが重視されるようになった背景
ではなぜ、現代になってエンパワーメントが重視されるようになったのでしょうか。その背景をご紹介します。
企業による迅速な意思決定
現代のビジネス環境は、技術革新や価値観の多様化などによる市場の変化に素早く対応するため、迅速な意思決定が求められるようになっています。
迅速な意思決定のための体制づくりとして、情報をトップに集めて意思決定を行うのではなく、現場で状況に則した意思決定ができるようなエンパワーメントが注目を集めています。
若手人材の育成
労働力不足が顕在化した現代では、市場で即戦力を求めるだけでなく、いかに若手人材を育成していくかも重要です。エンパワーメントで早い段階から若手に裁量を与え、自ら状況を見て判断する経験を積ませることで、より効率的な人材育成に繋げる取り組みが増えています。
エンパワーメント導入のメリットや効果
エンパワーメントの導入にはさまざまなメリットがあります。ここでは主なメリットを3つご紹介します。
主体的に動けるようになる・責任感が芽生える
権限譲渡をすると、譲渡された方には責任が与えられることになります。自分の裁量で動き、その行動や結果に対する責任を意識させることで、指示待ちではなく主体的に考え動ける人材への成長を促すことができます。
仕事に対するモチベーションが向上する
裁量を持って考えて行動できる仕事が増えることで、従業員の仕事に対するモチベーションの向上が図れます。ただし、与える権限があまりに過大だと責任感が悪い意味でのプレッシャーに変わり、モチベーション低下に繋がる可能性があるので注意が必要です。
生産性の向上に繋がる
従業員の役割に応じて権限委譲しておけば、現場で必要な意思決定をスムーズに行えます。管理職よりも現場に近い位置で意思決定を行えるため、管理職の回覧や承認待ちなどの無駄がなくなり、業務の生産性向上に繋がります。
マネジメント能力の向上に繋がる
裁量を与えられた従業員は、少なからず現場や周囲の従業員に対する指示や意思決定を行うことになります。早い段階から実践的なマネジメント経験を積めるため、将来の管理職候補としてマネジメント能力の向上が期待できるでしょう。
顧客満足度の向上に繋がる
権限が集約された状態だと現場で発生した事象への判断にかかる時間が長くなり、迅速な対応ができない可能性が高くなります。しかし、エンパワーメントを導入すると現場の判断能力の向上と迅速な対応が可能となり、結果として顧客満足度の向上に繋がります。
エンパワーメント導入の注意点
一方、エンパワーメントにはデメリットも存在するため、慎重に取り組む必要があります。ここではエンパワーメントの具体的な注意点とその対策を解説します。
組織と従業員とでズレが生じる可能性がある
従業員に裁量を持たせ過ぎると、従業員が組織の方向性と合わない判断をするリスクが生まれます。権限を与える従業員には組織の理念や方針を深く理解している人材を選定する、組織と従業員の方向性を合わせるための基準をあらかじめ策定しておくなどの対策が必要です。
エンパワーメントが適していない人材もいる
価値観が多様化している現代においては、裁量や責任を持って行動することを苦手とする人材も多くなってきています。プレッシャーに弱い方や指示を受けて行動するほうが適している方などもいるため、人材に合わせてエンパワーメントを導入するかどうかを判断することが重要です。
従業員の失敗を責めない・許容する
エンパワーメントによって従業員はある程度の裁量を持って業務にあたるようになりますが、最初から適切な判断ができるわけではありません。判断に困る場合にフォローできる体制を整えておくことや、失敗も重要な経験として許容する雰囲気を作っておくことが重要です。
エンパワーメントを高める方法やポイント
ここまで解説したように、エンパワーメントにはメリットが多い一方デメリットの影響も大きいため、慎重に取り組む必要があります。ここではエンパワーメントを高める方法やポイントを解説します。
組織全体に方向性を周知させる
エンパワーメントを高めるには、従業員の理解と共感が欠かせません。組織全体にエンパワーメントを行う目的や目標値などを周知し、エンパワーメントに対する共通認識を持たせることが大切です。
社内のすみずみまで周知を行き渡らせるためには、社内の情報共有ツールを導入・活用することが有効です。
権利譲渡の範囲やルールの策定を行う
エンパワーメントの注意点で解説した通り、不用意にエンパワーメントを進めると組織と従業員との間にズレが生まれる可能性があります。どこまでの範囲で権利を譲渡するのか、どういった場合に上長と相談するのかなど、エンパワーメントの範囲やルールを策定しましょう。
策定したルールは、社内の情報共有ツールなどで従業員がいつでも閲覧できるようにしておきましょう。
従業員の能力や業務のキャパシティを把握する
エンパワーメントの注意点で解説した通り、エンパワーメントは従業員の適性をふまえて推進する必要があります。面談などを通し、エンパワーメントに適しているか、業務や知識レベルからどこまでの判断を任せられるかという点を確認しておきましょう。
都度適切なフォローを行う
従業員が最初から適切な判断ができるわけではないため、権限譲渡して以降も都度適切なフォローを行う必要があります。しかし、従業員の判断を頭ごなしに否定してしまってはモチベーションの低下に繋がります。
従業員の判断を尊重しつつ、よりよい判断方法としてどのような基準で判断を行うべきなのかを指導するとよいでしょう。
情報の公開や共有を行う
エンパワーメントを導入し従業員に判断する機会を与えても、権利譲渡した人材に情報が公開・共有されていないのでは適切な判断ができず、形式だけのエンパワーメントになってしまいます。権利譲渡する人材には、人事や経理・経営戦略など、判断を求めるために必要な情報を公開・共有しましょう。
ただし、情報漏洩のリスクもあるため、公開・共有する情報の範囲を必要最小限にするとともに、入社間もない従業員や正式な雇用関係にない人材への情報公開・共有は慎重に行いましょう。
エンパワーメントの事例を紹介
エンパワーメントの導入方法は分かったものの、まだ具体的な運用のイメージがわかないという方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、エンパワーメントの具体的な取り組み事例をご紹介します。
事例1
リゾート施設を複数運営するA社は、もともとのトップダウン経営からエンパワーメントの導入に踏み切り、人材の定着や成長、リゾート地の再建などで多くの成功を収めています。
正確な情報を全社員に共有すること、境界線を明確にして自律的な働き方を促すこと、階層組織をセルフマネジメント・チームで置き換えることの3つが、A社の成功の鍵とされています。
事例2
多様なインターネットサービスを提供するB社では、エンパワーメントを高める手法として、創業者達が全従業員に対して毎週ライブ配信でメッセージを伝える取り組みを行っています。
エンパワーメントに必要な情報をオープンにするだけでなく、すべての従業員に分け隔てなくメッセージを届けることで、各従業員の自律性が育まれ、多様な意見の創出に繋がっています。
企業にエンパワーメントを導入するならQastが便利
エンパワーメントを導入する際には、組織全体への周知や適切な範囲への情報公開・共有、業務状況や進捗の可視化などが必要となります。これらをサポートするツールとしておすすめなのが、ナレッジプラットフォーム「Qast」です。
【こんな方におすすめ】
- 誰でも使いやすいツールをお探しの方
- 情報・ナレッジ共有の場を一つに集約したい方
- 部署や拠点を横断したコミュニケーション環境を構築したい方
【主な機能】
- 社内板知恵袋となるQ&A機能
- 匿名で困りごと・知りたいことを投稿できる「こましりbox」機能
- メンバーの経歴やナレッジを可視化するプロフィール機能
- 部署や拠点を繋ぐワークスペース機能
- ツールの活用状況を可視化するダッシュボード機能
【特徴やポイント】
Qastはシンプルな情報・ナレッジ共有ツールであり、誰でも簡単に情報・ナレッジ共有ができます。AIによる投稿の要約で素早く情報を把握したり、質問文を自動生成して困りごとの解決を効率化したりと、生産性向上に繋がる便利な機能が備わっている点も特徴です。AzureADとの連携やIDログイン機能により、従業員それぞれに適切な範囲で情報やナレッジを共有でき、セキュリティ性を担保しつつご活用いただけます。
まずはぜひ資料請求からQastの機能を確認してみてください。
まとめ
エンパワーメントには、自発的に考え行動できる人材を育て、モチベーションや顧客満足度を向上させるメリットがあります。一方、組織と従業員の間で意思決定や考え方にズレが生じたり、人材に合わせたエンパワーメント実施の判断が必要になったりといったデメリットもあり注意が必要です。
また、エンパワーメント推進の際には、組織全体への周知や権限譲渡範囲の選定、判断に必要な情報の公開・共有、従業員の適性把握、失敗リスクの受容といった取り組みが必要となります。
ナレッジプラットフォーム「Qast」を利用すれば、組織全体への周知や必要な範囲への情報公開・共有、業務状況や進捗の可視化を円滑に進められます。エンパワーメント推進の際には、ぜひQastの導入を検討してみてはいかがでしょうか。