MECE(ミーシー)の概念や必要性とは?フレームワークの活用方法についても解説

ビジネスにおいて物事を論理的に思考するロジカルシンキングは非常に有効です。しかし、具体的にどのような思考をすれば良いのかわからないという方もいらっしゃるでしょう。そんな時役立つのが「MECE(ミーシー)」です。

この記事では、MECEの概要やロジカルシンキングに役立つフレームワーク、活用方法を解説します。

MECE(ミーシー)とは

MECEとは、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の頭文字を取った言葉です。それぞれ「Mutually(お互いに)」「Exclusive(重複せず)」「Collectively(全体に)」「Exhaustive(漏れがない)」という意味で、漏れもダブりもない状態を表します。

ロジカルシンキングとの関係

MECEはロジカルシンキングを行う際の基本となるフレームワークです。MECEを用いて物事を整理すれば、必要な要素を残しつつ、重複し無駄になっている要素を排除できます。結果として必要な要素だけを整理して物事を考えられるため、目的達成や課題解決に対して正しいアプローチを導きやすくなります。

MECEの必要性や重要性

ビジネスでは、時にさまざまな要素が絡み合う複雑な問題を解決しなくてはいけない場面があります。そのような複雑かつ考慮すべき要素が多い問題を解決する時こそ、効率的に進められるMECEの活用が重要となるでしょう。

現代は、技術の急速な発展や価値観の多様化を背景に、ニーズが変化する速度も早まっています。企画戦略や施策検討など、ニーズの変化に柔軟に対応するうえでも、MECEの必要性が高まっています。

MECEを使った具体例

では、MECEの活用について、より具体的な例を示しながら理解を深めていきましょう。

MECEを使った具体例

漏れなし、ダブりなし

ここでは、マーケティング施策を行う際のターゲットで考えてみましょう。例えば、ターゲットを年代別で以下のように分類してみます。

  • 0歳~20歳
  • 21歳~40歳
  • 41歳~60歳
  • 61歳以上

ターゲットが人であれば、このいずれかの分類に当てはまりますし、重複もしていません。これが「漏れなし、ダブりなし」の状態です。

MECEに当てはまらない要素

同じように、マーケティング施策を行う際のターゲットを例に、漏れやダブりがある状態を解説します。

漏れあり、ダブりあり

例えば13歳~19歳のティーンエイジャーと呼ばれる層をターゲットにする場合に、要素を以下のように分類してみます。

  • 中学生
  • 高校生
  • 18歳~19歳

この分類では、一見13歳~19歳すべてを網羅できているように見えますが、中学卒業後に社会人となった方は分類に含まれず、漏れがある状態です。また、高校生は15歳~18歳なので、18歳が要素として重複しています。そのためこの場合、「漏れあり、ダブりあり」の状態と言えます。

漏れあり、ダブりなし

次に、全年齢をターゲットにする場合に、年代別に以下のように分類してみます。

  • 10代
  • 20代
  • 30代
  • 40代
  • 50代
  • 60代以降

この分類では全年齢をターゲットにしたいところですが、10代未満(0歳~9歳)が分類できないため、漏れがある状態です。一方、それぞれの要素に重複はないため、「漏れあり、ダブりなし」の状態です。

漏れなし、ダブりあり

日本国内に住む方をターゲットにする場合に以下のように分類してみます。

  • 北海道
  • 東北
  • 関東
  • 東京
  • 中部
  • 近畿
  • 関西
  • 中国
  • 四国
  • 九州・沖縄

この分類では、日本国内であればいずれかの分類に該当するため漏れはありません。一方、「近畿」と「関西」は重複する要素があるため、「漏れなし、ダブりあり」の状態です。

MECEの考え方や分類するための切り口

MECEの具体例をご紹介しましたが、具体的にどのように整理すればMECEの状態にできるのでしょうか。MECEで整理する際の考え方や分類の切り口を解説します。

2つのアプローチ方法

MECEにはトップダウンアプローチ、ボトムアップアプローチの2種類あります。それぞれについて解説します。

トップダウンアプローチ

トップダウンアプローチは、最初に全体像を俯瞰しながら整理できる点がメリットです。
始めに大枠を定めたうえで細かい要素にブレークダウンしていきます。

例えば、優秀な営業担当者に必要なスキルを考える場合、まずコミュニケーション力、思考力、課題発見力のように大枠の分類分けを行います。そこから、コミュニケーション力であれば聞く力、話す力などのように細かくブレークダウンします。

ボトムアップアプローチ

ボトムアップアプローチは、全体像がはっきりしない問題の整理に効果的で、未知の領域に強い点がメリットです。
細かい要素をどんどん挙げていき、最終的にグルーピングすることで全体像を作っていくアプローチです。

例えば、優秀な営業担当者は、顧客の話をさえぎらない、適度に相づちやコメントを入れるなどのように細かい要素を挙げていき、その後にこれらを聞く力としてグルーピングします。

トップダウン、ボトムアップは、企業の意思決定スタイルのアプローチとしても有名です。詳しくは以下の記事で解説しています。

トップダウン・ボトムアップとは?企業に取り入れる方法やツールを紹介
企業の意思決定スタイルには「トップダウン」と「ボトムアップ」の2つが存在します。2つの意思決定スタイルにはそれぞれメリットとデメリットがあり、一概にどちらの意思決定スタイルのほうが良いかは決められませんが、重要なのは自社環境に合わせて両者のメリットを組み合わせた意思決定を行うことです。 今回は、トップダウンとボトムアップのそれぞれの概要やメリット・デメリット、自社に取り入れる際のポイントなどを解説します。本記事を参考に自社にあった意思決定スタイルを取り入れてみましょう。

分解するための4つのポイント

MECEで漏れなくダブりなく整理するためには「分解」を行う必要があります。分解するためのポイントは次の4つです。

要素で分解

全体像を押さえたうえで細かい要素に分解していく方法です。「足し算型」や「積み上げ型」とも呼ばれます。各要素を組み合わせた時に全体像になるかをチェックしながら行うと良いでしょう。

対称的な概念で分解

物事を対称的な概念によって分解する方法です。質と量、偶然と必然、一定と変動のように対になる概念を活用して物事の分析を行い、要素を分解します。

プロセスで分解

物事をプロセスごとに分解する方法です。プロセスごとに細分化し、各分類のなかで分析を進めていきます。有名な改善手法であるPDCAサイクルも、改善を行う一連の流れをプロセスで分解したものにあたります。

因数で分解

分析対象を計算式で表し、各要素に分解する方法です。例えば、売上は「顧客数」×「顧客単価」に分解でき、売上を向上させるには顧客数もしくは顧客単価もしくは両方を大きくすれば良いことがわかります。因数分解するとA×Bのような計算式になるため「掛け算型」とも呼ばれます。

MECEを活用するためのフレームワーク

MECEを活用したフレームワークはさまざまあります。ここでは代表的なフレームワークをご紹介します。

PDCA

業務改善に必要な要素を「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の4つのプロセスに分け、一連のプロセスを繰り返すことで成果を上げるフレームワークです。業務改善における有名なフレームワークで、さまざまなビジネスシーンで活用されています。

PDCAについては以下の記事でも詳しく解説しています。

PDCAとは?効率良く回すコツやおすすめのITツールを紹介
1950年代以降、業務の管理手法として長く活用されてきたPDCA。生まれてから長い年月が経っているため古い手法と思われがちですが、未来の予測が立ちにくいVUCA時代に突入している現在においてもPDCAは有用な手法です。 今回は、PDCAの概要や効率良く回すコツ、おすすめのITツールなどをご紹介します。この記事を参考にあらためてPDCAの有効性を知り、業務改善に役立てましょう。

SWOT分析

SWOT分析は、自社および自社を取り巻く外部環境を「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つで評価し現状分析を行うフレームワークです。プラス・マイナス、内部環境・外部環境の軸で整理し、ビジネスチャンスの獲得やリスク回避などに利用します。

3C分析

3C分析は、「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの要素から自社を分析するフレームワークです。現在の市場において、競合他社と比較して自社がどのような立ち位置にいるのかを把握し、事業計画やマーケティング戦略などを検討する際に利用します。

バリューチェーン

バリューチェーンは、事業活動における一連のプロセスを一本の鎖にたとえ、各プロセスでどのような付加価値が生み出されているかを分析するフレームワークです。価値創造の最大化・最適化を行う際に利用します。

ロジックツリー

ロジックツリーは、一つの問題や目標を木のように枝分かれさせ、必要な要素を細分化していくフレームワークです。全体像を把握しながら、細かい要素がどの部分に紐づいているのかをわかりやすく示すことができます。問題を深掘りしたい場合に利用します。

PEST分析

PEST分析は、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4つの要素で自社を取り巻く環境を分析するフレームワークです。PEST分析で扱うのは、自社では動かすことが難しいマクロな環境要素です。中長期的かつ企業全体が影響する事業計画などを策定する際に利用します。

これらの他にも、AIDMAや4P分析、5フォース分析、7S分析など、さまざまなフレームワークがあります。

MECEを活用するポイントや注意点

日常業務においてMECEを活用する際のポイントや注意点を解説します。

優先順位を明確化する

要素を分解し細分化していくと、考慮しなくても大きな影響が出ない、または重要性が低い要素が出てくることがあります。要素を分解した後は優先順位を明確化し、重要性が低い要素の考慮に時間を割きすぎないようにしましょう。また、優先順位の設定は、適宜レビューなどを行い客観的な判断を基に行うのが良いでしょう。

分解することが目的にならないようにする

MECEはあくまで、要素を分解して整理し、問題解決や目標達成をしやすくするための手段です。要素を細分化することが目的となり分解に時間をかけすぎないよう注意しましょう。

分類できないものもあることを意識しておく

MECEを用いてもすべての物事を分類できるわけではありません。要素が複雑化している現代においては、「漏れなし、ダブりがなし」の分類ができない場合も多くあります。そのため、分類できないものもあるということを認識しておきましょう。

情報の整理や共有できる体制を整えておく

いくらキレイに情報を整理しようとしても、人である以上、主観による偏りや思考のヌケモレはつきものです。MECEによる思考をしやすくするためにも、情報を整理しやすい環境の整備や周囲のメンバーと認識を共有できる体制を構築しておきましょう。例えば、社内情報共有ツールなどの導入が有効です。

情報の整理やスムーズな共有には「Qast」がおすすめ

Qast

MECEを用いた思考をしやすくするための情報整理や情報共有をサポートするツールとして、ナレッジ経営クラウド「Qast」をおすすめします。Qastは、タグ付やフォルダ分類によって投稿した情報を整理でき、マルチデバイスで社内・社外を問わずに情報共有ができます。

MECEを始めとするロジカルシンキングを行う際の情報整理の場として、ぜひQastをご活用ください。

Qastについて詳しくはこちら

まとめ

MECEは、情報を「漏れなし、ダブりなし」の状態に分類して整理し、目的達成や課題解決に向けた適切なアプローチを導きやすくする思考法です。物事が複雑化・多様化しているこの時代において、MECEはより重要な思考法になっています。

MECEも含め、ロジカルシンキングのフレームワークによって得られる成果はさまざまなものがあります。この記事で解説した内容を参考に、自社内の分析にぜひロジカルシンキングを取り入れてみてください。

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