メタ認知とは?認知力の高い人・低い人の特徴や、能力の高め方やポイントを解説

メタ認知とは、ビジネスパーソンの一つの理想とされる「客観的な視点を持つこと」に繋がる概念です。

この記事ではメタ認知について、意味や定義、分類や高めるメリット、メタ認知が高い人・低い人の特徴、メタ認知を向上させる具体的な方法などをご紹介します。

メタ認知とは?

メタ認知とは、自分の認知を自分自身が客観的に見つめることです。認知とは、知覚・記憶・学習・思考など、頭の働き全般を指しています。

元々メタ認知は認知心理学の専門用語でした。1970年代に米国の心理学者ジョン・H・フラベル氏が提唱した「メタ記憶(メタ認知のうち記憶に特化したもの)」がその発端とされています。

しかし最近では、自分を客観視できること、すなわち「思い込みや勘違いを防いで思慮深い行動を選択しやすくなる」という観点から、ビジネスでも役立つ概念として注目されています。

「メタ」の意味

メタ認知のメタとは「高次の」や「超越した」といった意味を持ちます。変化や後退といった意味を持つギリシャ語の「meta」が語源の言葉です。「本来よりも上の視点を持つこと」といったニュアンスがあり、たとえば、映画の登場人物が次元を超えて視聴者に話しかけてくるようなことは「メタ発言」と呼ばれます。

メタ認知の場合は、「自分の認知をさらに上の次元から見つめる」と考えるとイメージしやすいかもしれません。

メタ認知の定義

メタ認知は意味の広い言葉です。心理学事典によれば以下の通り定義されています。

(前略)認知過程に関する知識、自己の認知状態やその過程の評価、認知過程や方略の実行制御、認知活動に関連した感情的評価といった広範囲な心的事象を包摂する(後略)

引用・一部抜粋 有斐閣「心理学事典」

少し複雑ですが、ビジネス上は前述の「自分の認知(知覚・記憶・学習・思考など頭の働き全般)を自分自身が客観的に見つめること」の認識で問題ありません。

メタ認知の分類

メタ認知の分類

メタ認知は、前提となる知識である「メタ認知的知識」と、具体的な行動となる「メタ認知的活動(メタ認知的技能)」の2種類に分かれます。

メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、メタ認知を働かせるために必要な前提知識のことです。一般的には「人」「課題」「方略」の3種類に分けて語られます。

分類概要・例
人に関する知識自分や相手の特性、あるいは一般的な人間に関する知識
例)
「私はそそっかしいところがあり、ケアレスミスが多い」
「人間は自分の思い込みで言葉を解釈しやすい生き物だ」
課題に関する知識 メタ認知を働かせる課題に関する知識
例)
「取引先に提出する書類はケアレスミスがあってはならない」
「商談ではお互いの認識のズレをなくす工夫が必要」
方略に関する知識課題を解決するための具体的な方略の知識
例)
「ケアレスミスは見直しで減らすことができる」
「認識のズレは数値を用いた意思疎通により防ぎやすくなる」

メタ認知を高めるためには、このメタ認知的知識を増やしていく必要があります。具体的な方法は後述します。

メタ認知的活動(メタ認知的技能)

メタ認知的活動(メタ認知的技能)とは、メタ認知的知識を受けてメタ認知を働かせる具体的なアクションのことです。「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」の2種類に分かれています。

分類概要・例
メタ認知的モニタリング自分の認知を自分自身でチェックすること
例)
「この書類にはケアレスミスがあるかもしれない、とふと気が付く」
「商談中、今の自分の発言は誤解を招いたかもしれないと不意に認識する」
メタ認知的コントロール自分の認知をチェックした結果となる対処行動のこと
例)
「第三者の手も借りつつ、書類の見直しを再び行う」
「数値を用いた伝わりやすい表現で発言し直す」

メタ認知的知識の「人」や「課題」がメタ認知的モニタリングを引き起こし、同知識の「方略」がメタ認知的コントロールを定めるイメージです。

メタ認知の重要性や高めるメリットとは?

では、メタ認知がなぜビジネスで重視されているのか、その向上によりどのようなメリットが期待できるのかを見ていきましょう。

円滑なコミュニケーション・人間関係が構築できる

メタ認知が高まると、自分の発言や行動が周囲にどのような影響を与えるのか自覚できるようになります。

相手に不快感を生じさせない円滑なコミュニケーションがとりやすくなり、職場内の人間関係も改善されます。取引先や顧客との洗練されたやり取りも期待できるでしょう。

客観的な視点で物事を考えられるようになる

メタ認知は自分の認知をまるで第三者のように評価する作業で、それはビジネスパーソンの必須能力である「客観的な視点で物事を捉えること」と同じです。

メタ認知が高まると、問題の本質を見極めて論理的に解決策を検討できるようになります。

感情を上手くコントロールできる

感情的にならず冷静に行動しやすくなるのもメタ認知を高めるメリットです。メタ認知が働く過程では、自分の現在の感情状態をその原因と共に客観視します。

それにより、論理的に対処しやすくなるのはもちろん、そもそもネガティブな感情を抱く必要がないことにも気が付きやすくなります。

例)相手の強い語調に怒りを感じる→誰に対してもそうした口調の人物であって、自分が敵視されているのではないのだと理解し、怒りが静まる

メタ認知が低い人の特徴

では、メタ認知が低い人はどのような特徴を持つのでしょうか。

感情的になりやすい

メタ認知が低い人は感情的な振る舞いをしやすい傾向にあります。怒りや悲しみの理由を客観視できず、その感情に溺れてしまうためです。

議論の中で個人攻撃を始めたり、大声で怒鳴りつけたり、物に当たったりといった行動が代表的な例です。

自分の非を認められない

自分を客観視できないメタ認知の低い人は、自らの非を素直に認められない特徴を持ちます。トラブルに際して「これは自分に責任があるだろう」と論理的に分析ができないためです。

また、自分が悪いと内心では理解しつつも、感情を抑えられず非を認められないケースもあります。

マイナス思考になりやすい

メタ認知の低さはマイナス思考をもたらします。客観性のなさゆえ同じ失敗を繰り返しやすく、成功体験を積みにくいためです。

また、周囲から見れば些細であったり避けようがなかったりする失敗を、「こんなミスをするなんて自分はダメだ」と深刻に捉えやすい点も問題です。

メタ認知が高い人の特徴

では、反対にメタ認知が高い人はどのような特徴を持つのか見ていきましょう。

柔軟な考え方ができる

メタ認知が高い人は柔軟な考え方が身に付いています。多角的な視点を持てるため、一つの事柄にこだわらず、「AがダメであればBをすれば良い」と別の対処法を検討できます。

会話中に相手の立場や心情を想像して咄嗟に顔を立てるなど、臨機応変な行動も得意です。

何事にも冷静に対処ができる

メタ認知が高いと、負の感情から抜け出し、何事にも冷静に対処しやすくなります。怒りや悲しみの原因を落ち着いて見つめ、適切な解決策を検討できるためです。

また、「大声で怒る自分が周囲からどう見られるか」など、客観的な印象を想像できることから、自制が効きやすい性質を持ちます。

視野が広く物事の本質を見極めることができる

メタ認知では、一つの事柄を感情的にならず多角的な視点から見つめます。その過程は、物事の本質を見極めることに繋がります。

その本質をもとに、これまでの業務で学んだ知識を別の仕事にも活かすなど、応用が利きやすい人材として自社に貢献してくれます。

自分を客観的に見ることができる

ここまでをまとめると、メタ認知が高い人は自分を客観視できる人だといい換えられます。

問題解決力に優れ、感情に溺れず、本質を見極めて行動できる人。自己中心的な人物の対極にある、自社のパフォーマンスを向上させてくれる存在です。

社内・チーム内のメタ認知能力を高める方法

では、社員のメタ認知能力を高めるための方法を見ていきましょう。ここでは、4つの方法をご紹介します。

フリーライティング

フリーライティングとは、自分の考えや感情を思うまま紙へ書き出していく手法です。「ライティングセラピー」と呼ばれることもあり、自分の状態を客観視する癖を付けるトレーニングとして用いられます。

フリーライティングには厳密なルールはありませんが、以下を意識しながら実践すると効果を得やすいといわれています。

  • 5分~15分ほど集中して行う
  • できるだけ素早く、止まらないように書くよう意識する
  • 漢字の間違いや文法などは意識せず思うがままに書く

マインドフルネス

マインドフルネスは、「こうすべきだ」というような思い込みや価値観を手放し、目の前の今この瞬間に意識を向けた精神状態のことです。メタ認知の向上の観点では、フリーライティングと同様、自分を客観視するのに役立ちます。

マインドフルネスに到達する方法は瞑想が一般的です。以下は挑戦しやすい簡易的な瞑想方法です。

  1. 1日のうち何回か、呼吸に注意を集中します。1度ずつ、あるいは2度ずつ息を吸ったり吐いたりする度に、腹部を空気が通過し、ふくらんだり引っ込んだりするのを感じてください。
  2. 注意を集中している瞬間瞬間に、湧いてくる思いや感じに気をつけてください。そういう思いや感じ、あるいはそういう思いや感じを受け止めている自分に対して評価は下さずに、ただ観察してください。
  3. また、物事に対する見方や自分に対する感じ方に何らかの変化が生じた場合も見落とさないでください。

引用:東京大学経済学部・経済学研究科 学生サポートルーム「News Letter vol7 2014,Nov

討論会・意見交換会

討論会や意見交換会の開催は、メタ認知的活動の前提となるメタ認知的知識を増やすのに役立つ手段です。他者との交流を通じて自分の中にない新たな視点を取り入れれば、メタ認知が有効に機能しやすくなります。

たとえば、過去のトラブルや失敗事例をテーマに参加者同士で原因・解決策を話し合えば、今後の似たシーンで全員がうまく対処しやすくなるはずです。

実践と評価の繰り返し

メタ認知はさまざまな心理学的技法と同様、理論を頭で理解するだけではなく、何度も実践して身に付けていくことが大切です。

メタ認知を意識したアクションの繰り返しにより、徐々に思考や行動が洗練されていきます。改善に向けた行動や思考の評価においては、討論会・意見交換会などで他者の目も交えられると正道から外れにくくなります。

まとめ

メタ認知とは自分の認知を自分自身が見つめることであり、客観的な視点を持ったビジネスパーソンとしての活躍に必須の技能です。

ここでご紹介したメタ認知の高め方を取り入れながらメタ認知の優れた人材を社内で育成し、自社の生産性向上を目指しましょう。

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