WBSの目的や作り方を徹底解説!ポイントや注意点についても紹介
プロジェクトを円滑に進めるために重要となるWBS。上手に使いこなせるようになれば、プロジェクトの成功率が大きく向上します。しかし、WBSを上手に使いこなす方法がよくわからないという方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、WBSの基本から具体的な作成方法、注意点などを解説します。
WBSとは
WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトを作業項目に落とし込み、プロジェクト達成に必要な作業を構造化する手法や資料を指します。プロジェクトにおける作業項目を把握するだけでなく、スケジュールを記載しプロジェクトやタスクの進捗管理に用いられるケースも多くなっています。
WBSの種類
WBSには、成果物ベースと段階ベースの2種類があります。成果物ベースのWBSは、プロジェクト達成に必要となる成果物を作成するために必要な作業項目を構造化したものです。成果物が明確な短期のプロジェクトで用いられるケースが多いでしょう。
一方、段階ベースのWBSは、プロジェクト達成までに必要となるステップを明確化し、ステップごとに作業項目を構造化したものです。成果物の完成がプロジェクトの達成とイコールとは限らない、中長期的なプロジェクトで用いられるケースが多いでしょう。
ガントチャートとの違い
ガントチャートとは、作業のスケジュールや進捗をチャート(グラフ)形式で可視化した資料です。
現場で作成されるWBSがガントチャートを含んでいるケースが多いため混同されやすいですが、WBSはプロジェクトに必要な作業の抜け漏れをなくすこと、ガントチャートはスケジュールや進捗を可視化し共有することに重点が置かれています。
プロジェクトの作業を洗い出し構造的に把握するのがWBS、その作業ごとのスケジュールや進捗をグラフで可視化するものがガントチャートだと捉えると良いでしょう。
WBSの目的や作るメリットとは?
WBSの作成にはさまざまな目的やメリットがあります。主な目的・メリットを5つご紹介します。
作業が明確化され全体を把握できる
WBSを作成すると、プロジェクト達成に向けてどのような作業が必要になるのかが明確化され、達成に向けた活動の全体像を把握できます。
作業が明確になれば、作業を実施する前にやるべきことが整理でき、決められた手順やプロセスに従って慌てず対応ができます。
また、後工程の作業もある程度想定できるようになるため、後工程を進めやすいように作業できる点もメリットとなるでしょう。
役割の分担がしやくすなる
プロジェクトは大規模化・長期化するほど複雑になり、複数の組織や担当者で役割分担をしながら進める必要性が出てきます。
その際、WBSをベースにすれば作業項目で役割分担ができますし、認識の齟齬も生まれにくくなります。プロジェクトの失敗でありがちな「役割分担があいまいで作業が進まない」というリスクを避けられるでしょう。
可視化されることで抜け漏れが防げる
WBSでは構造的に作業項目を洗い出していくため、作業の抜け漏れを防ぎやすくなります。
作業項目の一覧とともに各作業の相関関係を可視化することで、さらなる抜け漏れ防止に繋がり、プロジェクトの手戻り防止や納期・コスト超過のリスク対策ができるでしょう。
工数の把握・正確な見積もりができる
プロジェクトの工数を見積もる際、全体を見ていてはなかなか正確な数値を出すことができません。しかし、WBSを使った作業項目ごとの工数であれば算出しやすいでしょう。
作業項目ごとに工数を算出し、最終的に工数を合算することで、より精度の高い工数を見積ることができます。
遅れやトラブルに対して素早い対応ができる
WBSをもとに進捗管理を行えば、作業の遅れや後続作業への影響が明確になります。結果、工数不足であれば別のリソースを割り当てる、トラブルが発生していれば解決策を検討するなど、遅れやトラブルに対して素早い対応ができます。
また、後続作業に対して早い段階でフォローを入れるなど、リスク管理の面でもメリットがあるでしょう。
WBSの作り方の流れ
WBSのメリットを活かす具体的な作成方法を解説します。
作業を洗い出し明確化する
まずは作業項目を洗い出し、明確化していきます。MECE(※注1)を意識し、抜け漏れ・重複がないように注意しましょう。
中長期的な段階ベースのWBSを作成する際は、システム開発であれば要件定義、設計、開発、試験、リリース、保守運用のように、先におおまかなステップを洗い出し、そこから細かい作業項目に落とし込んでいくのがおすすめです。
※注釈1:MECEとは「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の頭文字を取った言葉です。「お互いに重複せず、全体に漏れがない)」という意味で、漏れもダブりもない状態を表します。
関連性を意識しながら優先度を確定、順序を決めていく
作業の洗い出しができたら、作業の優先度、順序を決めていきます。
優先度や順序を決める際には、その作業が別作業にどの程度影響を持つのかを判断することが非常に重要です。作業の遅延が発生した場合に後続作業にも大きな影響がある場合は優先度を高めるなど、作業ごとの関連性を意識しながら優先度と順序を決めるようにしましょう。
構造化していく
WBSを構造化し整理していきます。作業の洗い出しと優先度、順序の決定が適切にできていれば、ある程度構造化された状態になっているはずです。
このステップでは、構造化を意識しつつ、改めて作業の抜け漏れや重複がないか、優先度や順序が入れ替わったり矛盾していないかなどをチェックしましょう。
期日・時間を設定する
洗い出した作業の期日・時間を設定していきます。長期的なプロジェクトになるほど一つの作業の遅延がプロジェクト全体の遅延に繋がる可能性が高くなるため、工数を細かく見積もりながら期日・時間を設定しましょう。単純な日数で設定するのではなく、休日などを除いた実際の稼働日を考慮することも大切です。
作業の担当者を設定する
作業に対し担当者を設定していきます。特定の担当者に負荷が偏りすぎないよう注意しながら、担当者の得意分野をふまえて割り振りを行いましょう。
一つの作業に対して複数の担当者を割り振ることは必ずしもNGではありませんが、責任の所在があいまいになる可能性が高くなります。タスクに複数の担当者を割り振る場合には、責任者を明確にしておきましょう。
WBSを作るポイントや注意点
次に、WBSを作る際のポイントや注意点を5つご紹介します。
無理に細分化する必要はない
WBSの作業を無理に細分化する必要はありません。中長期的なプロジェクトになるほど先を見越してWBSを作成する必要が出てきますが、作業によっては作成時点での情報が不明確で、細分化が難しい場合があります。
また、そのような作業を細分化しても、結局修正が必要になり非効率です。不明確な作業は無理に細分化せず、プロジェクトを進めながら情報を確認して細分化していくと良いでしょう。
タスクを細かくし過ぎないようにする
WBSはさまざまな立場や組織の方が見る可能性がありますが、すべての人が同じ前提知識や専門性を持っているとは限りません。
そのため、タスクを細かくし過ぎると、かえって全体像がわかりにくくなる可能性があります。WBSを作る際は、見る人がわかりやすい粒度でタスクを整理することを意識しましょう。
予めテンプレートを用意しておく
WBSの作成を効率化するために、テンプレートを用意しておきましょう。テンプレートがあれば、WBSが作成しやすくなることに加え、抜け漏れの防止にも繋がります。
類似するプロジェクトで流用できるよう、プロジェクトの大きなくくりごとにテンプレートを作成しておくのがおすすめです。
期日や時間には余裕を持たせておく
作業にはミスやトラブルによる遅延がつきものです。あまりタイトにスケジュールを切ってしまうと、一つの遅延が多くの作業に影響を及ぼし、トラブルの元となってしまいます。
WBSで設定する期日や時間にはある程度バッファを持たせておきましょう。
まずは想定される理想的なスケジュールを出し、そこにバッファを加えたスケジュールを設定するのが効率的です。
パーキンソンの法則の通り、余裕がありすぎるのもかえって生産性を下げる結果になる点に注意が必要です。
1度作って終わりにしない
WBSは作成して終わりではなく、適宜修正やテンプレートの改善を行いましょう。WBSはプロジェクトやタスク遂行の重要なナレッジになります。
工数の見積もりが甘かった、想定外のトラブルが発生したなどの場合、それをナレッジとして活用すれば、今後のプロジェクト遂行を円滑に進められます。
「作成して終わり」「プロジェクト達成して終わり」ではなく、ナレッジとして長期的に保存するものと考えましょう。
WBSの作成にはツールを活用しよう
WBSをExcelで作成している現場は多くありますが、WBSやガントチャートの作成に手間取る、タスクの細かな管理ができないなどでお悩みのケースも多くあります。
WBSの作成を効率化する、WBSでは管理できない部分を補うためには、タスク・プロジェクト管理ツールの導入を検討すると良いでしょう。
たとえば、ナレッジ共有クラウド「Qast」であれば、タスク・プロジェクト進行のなかで得られた細かな情報をナレッジとして保存でき、WBS作成の効率化やプロジェクト成功率アップを実現できます。
また、おすすめのタスク・プロジェクト管理ツールは以下の記事でご紹介していますので、ぜひ併せてご参照ください。
まとめ
WBSは、プロジェクト達成に必要な作業項目を構造的にまとめ、プロジェクト・タスクの管理に活用する手法や資料です。
WBSがあれば、プロジェクトで必要な作業を抜け漏れなく可視化でき、作業内容や役割分担を明確化できます。また、コスト・工数見積りやリスク管理の面でも活用できるでしょう。
WBSはプロジェクト遂行に欠かせないものですが、ツールによっては細かな情報の管理に適していなかったり、ナレッジとして情報を残すのに適していなかったりします。
利用するプロジェクト・タスク管理ツールは適宜見直し、効率的にWBSを作成・管理できるツールを活用しましょう。